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2021年5月27日

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蕭 美琴 (しょう・びきん)

駐米台北経済文化代表処代表

神戸市生まれ。台湾・台南で育つ。米オハイオ州オーバリン大学東アジア研究学科学士、ニューヨーク・コロンビア大学政治学修士。台湾の立法委員をのべ4期務める。20年7月より現職(駐米大使に相当)。

今年4月、台湾の輸送揚陸艦「玉山」の進水式に出席する蔡英文総統 (AP/AFLO)

 今年2月、バイデン米大統領は国務省で就任後初めての外交演説に臨み、「外交を再び対外政策の中心に据える」と発言したとき、多くの人がその真意を測りかねた。「米国の最大の財産」である同盟国や重要なパートナーと「肩を並べる」と明言した大統領の次なる行動は何か ── 。

 しかしバイデン政権は、憶測が飛び交う余地を与えなかった。発足から2カ月後、アントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官が「強固な日米同盟」を再確認するために、初の外遊先となる東京へ向かい、象徴的な第一歩として日米安全保障協議委員会(日米「2プラス2」)が開催されたのだ。さらに米アラスカのアンカレッジで開催された、ブリンケン国務長官と中国の楊潔篪(ヤンジエチー)共産党政治局員との会談において、米国は明確で断固とした立場を表明した。

 こうした動きは台湾で歓迎された。バイデン政権がインド太平洋地域を重視し、米国の外交的な取り組みに同盟国やパートナーを積極的に巻き込む考えを持っていることがわかったからだ。台湾がとりわけ安心したのは、ブリンケン国務長官とオースティン国防長官が出席した東京での日米「2プラス2」会談後、日米が共同声明で「台湾海峡の平和と安定の重要性」を発表したからだ。

 日米の共同声明が台湾に言及したことは、さまざまな面で重要な意味をもつ。米国側で注目すべきなのは、台湾への支持が長期にわたり超党派で行われてきたことだ。私は台湾の駐米代表就任以来、米国の対台湾政策には強い継続性があるということに着目してきた。バイデン政権が台湾に対する支持を「確固たるもの」と位置付けたことだけでなく、そのほかにも具体的な進展があった。

 今年3月に米台が沿岸警備の協力強化を進めることで一致し、覚書に署名したこともその一つだ。またバイデン政権が新たに定めた暫定版の国家安全保障戦略指針のなかで、台湾は「先進的な民主体制であり、重要な経済・安全保障上のパートナー」とされている。さらに米国は、中国による台湾に対する支配力と武力の行使に関する懸念も繰り返し強調している。

中国の抑圧の「最前線」
日本の支持に感謝

 その一方で台湾は、日本政府が引き続き台湾への支持を公に表明してくれたことに感謝している。2020年5月、鈴木馨祐外務副大臣(当時)は、自身のブログで「台湾との関係は我が国の安全保障上も生命線と言っても過言ではない」と発信した。また、中山泰秀防衛副大臣も20年12月、台湾の安全保障を「アジアのレッドライン」と呼び、バイデン次期政権(当時)に対して、台湾を強力に支援するように要請した。

 さらに今年になって、茂木敏充外務大臣と岸信夫防衛大臣が、台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて表明しただけでなく、菅義偉首相もまた「台湾の平和と安定は地域の鍵であり、日米で連携し、抑止力を維持する中で台湾と中国が平和的解決策を見出せるような環境を作る」と述べた。

 米国と日本の当局者が次々に台湾への支持を表明してくれるようになったのは、まさにタイムリーな動きだといえる。台湾は長年にわたって、中国による抑圧の最前線にいる。中国は、台湾の民主主義や自由、生活様式を弱体化させて破壊しようとしている。

 台湾は、新型コロナウイルス感染症の流行を封じ込めた自らの経験を世界中で共有したいと考えているが、中国の政治的圧力によって、17年以降、世界保健機関(WHO)にオブザーバーとして参加することを拒まれてきた。ジャーナリストやNGO関係者を含む台湾の人々は、国際的な問題に積極的に貢献し参画することを望んでいるにもかかわらず、国連施設に入り国際的な議論へ参加することを認められていない。中国が、国際機関の活動に台湾が参加することに強硬に反対しているためである。

 安全保障面では、中国がこの地域で威圧的な行動を強めており、不測の事態が発生するリスクが高まっている。中国は近年、台湾の防空識別圏(ADIZ)への侵入だけでなく、日本や周辺諸国でも上空飛行の頻度を増やし、範囲を拡大してきた。今年になって、中国はすでに「中国海警法」も施行している。これはアジアの地域情勢を不安定にして、台湾をはじめ近隣諸国との間に存在する問題を悪化させるものになるだろう。

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