私はトランプ政権初期の国家安全保障担当大統領補佐官として、米国が中国共産党に対して攻めの姿勢の立場をとるに至った過程に深く関与した。この政策的立場は、習近平国家主席の下、中国共産党が引き続き一党独裁体制を保持・強化のために講じてきた措置に基づいており、安倍前政権は我々の評価に同意した。
トランプ大統領が再選するか、バイデン候補が大統領に選ばれるかにかかわらず、中国共産党のこれまでの「戦略」は変わらない。中国人民、他国および国際機関が党の利益に適う行動をとるために、いかに影響力・強制力を行使するかというものだ。そしてこの戦略には、必要であれば武力をもってしても台湾を中国に回帰させたいという党の願望が含まれている。
中国共産党への協力の要請、強制、隠蔽からなるこの戦略は、文化、経済、技術、軍事面など広範にわたる共産党の「努力」の総合である。人間の自由を制限し、権威主義的な統制を拡大しようとする中国共産党の試みは、中国国内にとどまらない。中国は、自国の政策や世界観を推進するために、協力要請とプロパガンダを組み合わせたアプローチを使う。
学者や政策形成者が「天下」という言葉で表現する、中国の世界における影響力の拡大。そのために中国の指導者たちは、中国の皇帝がかつて属国に対して権力を行使するために作り上げた朝貢制度の現代版を作ることを目指している。
新たな朝貢制度を形成する
3つの大方針
かつての帝国制度の下では、各国は、中国皇帝に服従することで貿易や平和という恩恵を享受した。中国共産党が21世紀版の朝貢制度の形成に成功すれば、世界で自由が制限され、繁栄は抑えられ、安全度も低下する。中国は新たな朝貢制度を「中国製造2025」「一帯一路」「軍民融合」という、3つの互いに重複する方針の下で大規模に実施し、形成しようとしている。
「中国製造2025」は中国をほとんどの面で独立した科学技術革新大国にすることを念頭に置いている。この目標を達成するために、共産党は中国国内にハイテク独占市場を築き上げ、外国企業から知財を搾取し、また技術移転を強制して技術も搾り取っている。国有企業と民間企業は、党の目的を達成するために互いに協力している。
事例によっては、外国企業は自社製品を中国国内で販売するために、中国企業との合弁が必須とされるか、強制されている。このような企業は党と密接な関係を持つ場合がほとんどで、知財や製造技術の移転が共産党内のパートナー、ひいては中国政府まで届くことが日常化している。