2022年11月29日(火)

21世紀の安全保障論

2021年12月8日

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辰巳由紀 (たつみ・ゆき)

スティムソン・センター日本部長

キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。東京生まれ。国際基督教大学卒業後、ジョンズ・ホプキンス高等国際問題研究大学院で修士号取得。在米日本大使館専門調査員、戦略国際問題研究所(CSIS)研究員などを経て2008年より現職。2012年よりキヤノングローバル戦略研究所主任研究員を兼任。専門は日本の防衛政策、日本の国内政治、日米安全保障関係、米国の対アジア安全保障政策。

 12月6日、米国は、2022年に北京で開催される冬季五輪および冬季パラリンピックに米政府から誰も出席しない、いわゆる「外交的ボイコット」を発表した。この米政府の発表に対し中国は早速、激しく反発。7日の定例記者会見の席上で、外務省の趙立堅報道官は「米国は代償を支払うことになる」などと述べた。11月15日にバーチャルとはいえ、初の米中首脳会談が行われてから1カ月も経たないうちに、米政府がこのような措置に踏み切ったことで、米中の緊張関係が当面続くことはほぼ確実になった。

北京五輪・パラの外交ボイコットを発表したジェン・サキ米大統領報道官(picture alliance/アフロ)

政権発足当初から〝異例の〟中国対応

 そもそも、バイデン政権は、今年1月の政権発足当初から、外交政策の優先課題の一つに「中国との戦略的競争」を掲げ、これを裏打ちする対応を次々と取ってきた。

 例えば、新政権発足後、米国務長官・国防長官とも、日本・韓国といった東アジアの同盟国を訪問する際に中国も訪問し、カウンターパートとの初会談に臨むことが多い。しかし、バイデン政権は、政権発足直後にアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官が揃って日本と韓国を訪問して外務・防衛閣僚会議(2プラス2)を行った後、両長官のどちらも中国まで足をのばさなかった。

 オースティン国防長官はその後インドを訪問、ブリンケン国務長官に至ってはそのまま帰国したのである。帰国するブリンケン長官を追いかけるように、中国から楊潔篪国務委員と王毅外相が米国に向かい、ブリンケン長官にジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官が合流する形で、アラスカにてバイデン政権としては初の米中ハイレベル会談が行われるという、前例のない初顔合わせとなった。

 また国防総省では、幹部人事に先駆けてロイド・オースティン国防長官が中国専門家のイーライ・ラトナー氏を中国問題担当長官補佐官に任命(同氏はその後、インド太平洋担当国防次官補に指名され、7月25日に次官補に正式に就任している)し、対中政策の包括的見直しを進めた。

 5G技術、レア・アース金属、AI、半導体、超音速技術、合成生物学、医薬品などの分野におけるサプライチェーンを、いかにパンデミックなどで人や物の流通に障害が生じた場合にも耐えうるものにできるかに関しても問題意識を高めている。レア・アース金属については国防総省が中国以外の国に拠点を置くレア・アース金属発掘・精製拠点を形成するために大規模な投資をすることを発表。ホワイトハウスも今年2月にサプライチェーンの強靭化に関するタスクフォールを形成した。

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