2022年9月28日(水)

21世紀の安全保障論

2021年12月8日

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辰巳由紀 (たつみ・ゆき)

スティムソン・センター日本部長

キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。東京生まれ。国際基督教大学卒業後、ジョンズ・ホプキンス高等国際問題研究大学院で修士号取得。在米日本大使館専門調査員、戦略国際問題研究所(CSIS)研究員などを経て2008年より現職。2012年よりキヤノングローバル戦略研究所主任研究員を兼任。専門は日本の防衛政策、日本の国内政治、日米安全保障関係、米国の対アジア安全保障政策。

 6月8日に発表されたタスクフォースの最終報告書の中でも中国が何度も名指しで言及され、この問題についても、中国を意識していることは明らかであった。

台湾についても強い警鐘

 さらに、11月3日に国防総省が発表した「人民解放軍の能力に関する年次報告書」の中では、「中国は米国の世界における影響力と力に並ぶ、もしくは追い越すことを目指し、インド太平洋地域においては米国の同盟関係および安保パートナーシップに代わって自国に有利な国際秩序を形成しようとしている」と明確に述べた。

 また、同報告書の中では、中国が宇宙やサイバーなどのドメインを含むクロス・ドメインで長距離攻撃を展開する能力を向上させていることや、核戦力を大幅に拡大していること、台湾に対して攻撃を行うために必要な能力を急速に強化していることなどが述べられた点も注目された。

 特に台湾については、すでに今年3月に、退役直前のフィリップ・デービッドソン米インド太平洋軍司令官(当時)が、上院軍事委員会で行われた公聴会の席上、「中国は6年以内に台湾を武力で併合するために動く可能性がある」と警鐘を鳴らしており、報告書が司令官の警告を追認するような形となっている。

 このように、中国に対する警戒感をあらわにしているバイデン政権だが、それでも、政権が最重要課題の一つに位置付ける気候変動問題では中国と〝没交渉〟のままでは何も成果が上げられないのが現実である。実際、ジョン・ケリー気候変動担当大統領特使は、上院外交委員会で20年近く一緒に活動した「元同僚」のバイデン大統領に、中国と対話するべきだと大統領に進言していると言われている。中国に対する強硬路線を支持するサリバン補佐官、ブリンケン国務長官、オースティン国防長官などとの間で意見が対立しているとも報じられた。

「率直な」「真正面から」 米中首脳会談の意味

 このような状況の中、バイデン大統領は11月15日、前述の習近平国家主席とのバーチャル米中首脳会談に臨んだ。首脳会談そのものは、両首脳が緊張をエスカレートさせることはお互いの利益にならないことを確認し、対話を続けることで合意したことが最大の成果と言っても過言ではないほど、具体的な成果は何一つなかった。

 事後にホワイトハウスがリリースした声明の中では、首脳会談においてバイデン大統領が「率直に(candidly)、真正面から(straightforward)」習主席と議論し、「具体的な(concrete)中身のある(substantive)」議論することが重要である旨を強調したとある。首脳会談のような場で「率直な」「真正面から」の議論をしたという場合、通常、首脳間のやり取りが時にはかなりの緊張感を伴うものであったことを意味する。むしろ、人権問題や「自由で開かれたインド太平洋」の重要性を強調し、台湾海峡の平和と安定をアメリカが重要視していることも明確に伝えるなど、「言わなきゃいけないことは全部言った」といった類の首脳会談だったことは想像に難くない。

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