21世紀の安全保障論

2021年10月28日

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辰巳由紀 (たつみ・ゆき)

スティムソン・センター日本部長

キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。東京生まれ。国際基督教大学卒業後、ジョンズ・ホプキンス高等国際問題研究大学院で修士号取得。在米日本大使館専門調査員、戦略国際問題研究所(CSIS)研究員などを経て2008年より現職。2012年よりキヤノングローバル戦略研究所主任研究員を兼任。専門は日本の防衛政策、日本の国内政治、日米安全保障関係、米国の対アジア安全保障政策。

 政権発足後、1年もたたないうちに、米バイデン政権が、早くも苦境に陥っている。1月に国民の融和と団結を訴えて発足したバイデン政権。なぜ、政権発足後1年足らずでこのような状況になってしまったのか。

(AP/アフロ)

アフガンでの「想定外」の事態

 契機は、今年8月にアフガニスタンからの米軍が撤退した際に現地で大混乱が起きたことだった。もともと、アフガニスタンからの米軍全面撤退は、トランプ前政権がタリバン側と2019年に到達した和平協定の中で、タリバン側が米軍関係者を対象にした攻撃をしないことを条件に合意されたものだった。

 現地の情勢を考慮したバイデン政権が撤退期限を8月末まで延長したものの、8月末の期限が近づくにつれて、アフガニスタンの文民政権と国軍が総崩れを起こし、タリバンによる攻勢が始まってから10日も経たないうちに、アフガニスタン政府は崩壊してしまった。

 アフガニスタン国民を含め大多数の人にとって「想定外」の事態が起きたことで、首都カブールは大混乱。米軍関係者を乗せて離陸しようとする米軍機になんとか乗ろうと空港に押し寄せるアフガニスタン人で一杯のカブール空港の状況は、全米にテレビで放映され、大きな衝撃を与えた。

 バイデン政権側は、トランプ前政権がタリバンと結んだ協定に手足を縛られ、米軍撤退の安全を確保するためには、撤退期限を3カ月延長するのが精いっぱいだったと主張している。

 この点については9月末に米下院軍事委員会で本件に関して行われた公聴会でも、出席したフランク・マッケンジー米中央軍司令官が、「トランプ政権とタリバンとの合意の結果、アフガニスタンに駐留する米軍の数が2500人以下まで減ったことを契機に、アフガニスタン国軍の士気は急激に低下し、これが結果的に、アフガニスタン政府の急速な崩壊につながった」と証言していることからも分かるように、妥当性がないわけではない。

 それでも、アフガニスタン政府の脆弱性を完全に把握できていなかったバイデン政権の責任を追及する声は多い。9月に上院軍事委員会が開催した公聴会では、政府側からの証人として出席したアントニー・ブリンケン国務長官の引責辞任を求める共和党議員とブリンケン長官との間で緊張したやり取りが行われた。

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