11月15日、オンラインで米中首脳会談が行われた。今回の会談からは特段の共同声明などの発表はなかったが、両首脳の間に通訳が介在したとはいえ、3時間半も議論をする機会を持ったことの意義は大きいと言えよう。台湾など基本問題について厳しいやり取りになったと伝えられる。相手の真意を確実に把握するには時として激しく議論しないと分からない。
台湾に関してバイデンは、一つの中国政策を守る旨、また一方的な現状維持変更には強く反対する旨述べたという。中国報道によると、習近平は台湾が独立を追求する場合、「我々は断固とした措置をとらざるを得ないだろう」と強調したという。
バイデンは最近、戦略的曖昧政策を超えて、台湾を「防衛する」と明言したり、台湾が独立していると受け取られるような発言もしたりした。首脳会談の翌11月16日、バイデンはニューハンプシャーで、記者が台湾の「独立」に対する真意につき質問したのに対して、米国は台湾の独立を「エンカレッジする(勇気づける)」ものではない、それは台湾が決めることである旨述べつつ、米国は台湾関係法に基づき行動する、それに尽きると述べた。
最近のバイデンの「曖昧な」発言は、それが意図的か「失言癖の例」の発言かどうかは兎も角、中国に対して一定の効果を果たしているように見える。事務レベルは従来の政策が変更されたものではないと解説を続け、バイデンは自分のラインを続けている。米国内には「曖昧政策」の変更論もあるが、目下の状況の方が余程柔軟で、現実的な政策ではないかと思う。
同盟国との連携の必要性は、同盟国にとっても重要である。新政権下の日本の対応が注視されているだろう。具体的には、先ず我が国防衛力の強化と米国などとの共同行動が重要であろう。日本の貢献はひと頃に比べ、予算、能力、協力行動などで大きく進歩してきた。
今後とも防衛予算や、一旦計画中止となった所謂イージス・アショアの代替能力の整備、敵地攻撃能力の検討、在日米軍経費負担問題 などを適切に、タイムリーに解決していくことが重要である。
もうひとつの重要事項は、我が国の対中政策である。新政権発足もあるので注目されている。今までの立ち位置をきちっと堅持していくことが重要と思われる。中国との対話は引き続き重要であるが、基本スタンスの変化の印象を与えるとミス・ステップになる。
11月18日、 バイデン大統領は、人権問題を理由に北京の冬季五輪につき「外交的ボイコット」(選手団は行くが政府要人は行かない)の検討を表明した(北京五輪には米国内に根強い反対論がある)。米国は、他国は夫々判断すべきとしているが、日本としては、西側諸国と足並みを揃えていくことが重要である。欧州が割れないことが望まれる。