2022年7月7日(木)

WEDGE REPORT

2021年11月29日

»著者プロフィール
閉じる

樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 米国のバイデン大統領が来年2月に迫った北京冬季五輪の〝外交的ボイコット〟を検討している。日本政府は、同調を求められる可能性が強いとあって困惑、戸惑いを隠せない。

 米国の顔を立てれば日中関係は再び悪化する。それを嫌って対中関係を優先させれば日米関係の軋轢は免れない。欧米と中国との板挟みにあった天安門事件直後の〝悪夢〟を彷彿とさせる。

 中国政府高官から性的関係を求められたと告発した女子テニス選手が消息不明と伝えられる問題も米政府の態度を硬化させている。日本政府としては、アメリカが穏便な手段をとることをひたすら祈りたい心境だろう。

(新華社/アフロ)

米国、以前からボイコット検討

 バイデン大統領の発言は11月18日。カナダのトルドー首相との写真撮影の席で、記者団から「北京五輪の外交ボイコットを支持するか」と聞かれ、「それは、われわれが考慮していることだ」と、明確に認めた。

 大統領の発言は、わずかにその一言にとどまったが、バイデン氏自身がこの問題に触れるのははじめて。しかも、習近平国家主席とのオンライン会談の翌日というタイミングもあって、〝あてつけ〟の印象を与えた。

 北京五輪の外交ボイコットについては、米国内では早い時期からとりざたされてきた。

 春先に国務省のプライス報道官は「北京の目に余る人権侵害、新疆でのジェノサイド(集団殺害)について、インパクトのある行動をとるよう同盟国と協議している。北京五輪も協議を続けるべき問題だ」(2021年4月6日の定例記者会見)と述べ、検討が始まっていることを明らかにした。

 この時はホワイトハウスのサキ報道官が、「(北京五輪への)われわれの方針は不変だ。同盟国と話し合ったこともない」と翌日、軌道修正したが、政府内で検討されているのは既定事実と受け取られている。

 米、英、カナダと欧州連合(EU)は21年3月に、新疆ウィグル自治区当局者の資産を凍結するなどの制裁を発動した。EUが制裁に加わったことによって主要7カ国首脳会議(G7)参加国では日本だけが同調を避けた格好になっている。

テニス選手失踪事件も影響

 ウィグルの人権状況に改善が全くみられないなかで、表ざたになったのが、元副首相から性的関係を強要されたと告発した女子テニス選手、彭帥さんが消息不明になった事件だ。

 この問題については、日本のメディアでも詳細に報じられているので重複は避けるが、中国側は彭選手が国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長とテレビ会談する映像を公開、「政治問題化しないよう求める」 (外務省の趙立堅報道官)と沈静化に躍起だ。

 しかし、ホワイトハウスのサキ報道官は今月19日、「深刻な懸念」を表明し、その所在について「独立した検証可能な証拠を示してほしい」(11月19日の記者会見)と要求した。英国など欧州各国も同調、日本の林芳正外相も懸念を表明している。

関連記事

新着記事

»もっと見る