台湾の危機は、起きるかどうかではなく、いつ起きるかの問題になりつつある。
「Wedge」2021年11月号では、日本戦略研究フォーラム(JFSS)主催の政策シミュレーション「徹底検証:台湾海峡危機 日本はいかに抑止し対処すべきか」で表出した日本における課題をWEDGE SPECIAL OPINION「台湾有事は日本有事 もはや他人事ではいられない」にて、検証した。記事内容を一部、限定公開いたします。全文は、末尾のリンク先(
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日本最西端の有人離島である与那国島からわずか110㌔メートルほどに位置する台湾で、武力衝突を含む緊急事態が発生すれば、その直接的な影響が日本、わけても台湾に隣接する八重山地域(沖縄県石垣市、竹富町、与那国町)や宮古地域(宮古島市、多良間村)に及ぶ可能性は極めて高い。考えうる最悪のシナリオは台湾を巡る緊急事態が拡大した結果、日本に対しても武力攻撃が発生することであり、今回の日本戦略フォーラム主催の台湾有事シミュレーションでも、そうしたシナリオが用意されていた。
日本に対する武力攻撃から国民の生命、身体、財産などを守るために行われる避難措置や避難住民への支援物資や避難場所の供与といった諸活動を「国民保護」という。国民保護は、国際人道法でいう文民保護に該当する概念であり、2004年に制定された「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」(以下、国民保護法)で規定されている。
ここでいう「武力攻撃事態等(下図①・②)」を含めて、日本の法律では軍事衝突や大規模テロなどの危機をいくつかの事態として整理している。各事態の定義等は図の通りだが、ポイントは、国民保護法を適用できるのは日本に対する直接的な攻撃が行われるかその危険性が極めて切迫した事態に限られ、台湾有事のような〝周辺地域〟で発生した緊急事態に起因した国民の生命、身体、財産に対する危険への対応が後手になってしまう可能性が高いことである。
国民保護の活動
法あれど執行できず
具体的に考えてみよう。
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