最大野党・国民党の主席選挙が9月25日に行われ、ベテランの朱立倫元主席が、45.78%の得票率を得て返り咲いた。一方で、急進的な中台統一派でキワモノ候補とみられていた在野の政治活動家、張亜中氏が32.78%で2位。選挙終盤で党指導部が、続投を目指していた江啓臣前主席の票を、朱氏に回す戦略を採らなければ、敗北もあり得た。
張氏は、中国本土から逃れた軍人の子息だ。外交官を経て、台湾大学教授など教職を歴任。2006年には、民間の政治活動家として当時の陳水扁民進党政権の打倒運動を率いた。16年に発足した中台統一を目指す政治団体「孫文学校」の責任者を務めるなど、異色の経歴の持ち主だ。
国民党主席選には4人が立候補。元主席の朱氏と、前主席の江氏の戦いと見られていたが、選挙戦終盤に張氏が急速に追い上げ、選挙直前の一部の世論調査では朱氏を抜いて首位になった。朱氏は張氏に「赤色統一派」のレッテルを貼って攻撃。当選したものの、同党の主席選挙で当選者の得票が過半数を割り込んだのは初めてという。
中台統一は国民党の党是で、各候補の主張に大差はない。しかし、朱氏の「親米・非反中」という優等生的な主張はパンチ力を欠き、統一を急げとの張氏のストレートな訴えが、国民党のコアな支持者の心に響いた。
もっとも、台湾の近年の世論調査では一貫して、「独立」派と「現状維持」支持派が合わせて9割近いが、統一支持派は7%ほど。自己認識も「台湾人」と「台湾人かつ中国人」の合計が9割を占める結果が続いている。今後も台湾全体で統一派が多数を占める可能性は小さく、国民党主席ならとにかく、張氏が総統選で勝利するのは至難だ。
なお張氏の善戦は、統一論よりも、国民党主流派に対する反発との指摘も多い。国民党は、縁故や世襲によるポストの分配、世代交代の遅れや女性幹部の少なさなど、旧態依然の体質から脱却できていない。若者や女性の有権者からは、時代遅れの党として見限られ始めている。
与党・民進党の強権的な政治姿勢に対する有権者の不満も少なくない。政権交代の必要性を訴える声は与党内からも出ている。游錫堃(ゆうしゃくこん)立法院長(国会議長)は台湾紙・聯合報に「自分は民進党員だが、永久政権は望まない。台湾を主体に考え、台湾国家への忠誠心のある政党による政権交代をなるべく早く常態化してほしい」と述べた。
国民党が政権を狙う野党として生き残るには、統一論の封印と、党内改革が避けられそうにない。