かつて小誌で連載し、好評を博した「天才たちの雑談」が2023年2月号以来、約2年ぶりにアンコールとして復活! SFで描かれたような世界は実現するのか。様々な分野の「天才」たちが最新技術やアイデアからその可能性を〝雑談〟した。
構成・編集部(梶田美有)
撮影・さとうわたる
瀧口 今回は、これまでのシリーズで人気の高かった「SF」をテーマにして、「あのSFは実現するのか」という内容でお送りします。最新の研究や、先生方の発想から、「この設定はこういう形では実現しそう」「これは無理そう」という観点でお話を伺いたいと思います。

経済キャスター、東京大学工学部アドバイザリーボード・メンバー、株式会社グローブエイト代表取締役
東京大学文学部卒業。現在、東京大学公共政策大学院に在学中。“情報の力で社会のイノベーションを加速する”株式会社グローブエイトを設立し、企業・アカデミアと、社会をつなぐコミュニケーションコンテンツの制作プロデュースを行う。書籍「東大教授が語り合う10の未来予測」編著。2024年新メディア・アカデミアコミュニケーションプラットフォーム「アカデミアクロス」を立ち上げ<映像×出版×イベント>を通じアカデミアと社会をつなげている。22年よりSBI新生銀行社外取締役に就任。24年世界経済フォーラム ヤンググローバルリーダーズ(YGL)に日本人のキャスターとして史上初選出。(撮影・さとうわたる以下同)
加藤 いいですね。SFは分かりやすいですし、意外とSFの世界を参考にしている方も多いと思いますからね。

東京大学大学院 情報理工学系研究科 特任准教授
慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程修了。博士(工学)。カーネギーメロン大学などで博士研究員として勤務。名古屋大学大学院情報科学研究科准教授などを経て2016年より現職。ティアフォー 創業者兼代表取締役社長、「The Autoware Foundation」代表理事。
瀧口 まずは、他人の「感覚」を体験できるテクノロジーは実現するのか、というテーマについて考えたいと思います。
暦本 1980年代の映画『ブレインストーム』では、人間の記憶や知覚を他人に伝達できるマシンが開発されます。記録した「感覚」は保管することもできるので、装置をつければ、あらゆる追体験が可能になる。物語では、開発者が心臓麻痺を起こした際、死ぬまでの感覚を自ら記録して、それを体験するとどうなるか、と話が進むのですが……。
今、VRで視覚や聴覚は再現できますが、例えば触覚などはまだ研究段階です。単純に「触った」という感覚であれば可能ですが、心臓麻痺のような、身体の中で「痛い」というような感覚を再現するのはまだ難しいという印象です。

東京大学大学院情報学環 教授
東京工業大学大学院理工学研究科情報科学科修士課程修了。博士(理学)。日本電気などを経て1994年よりソニーコンピュータサイエンス研究所に勤務し、現在フェロー・副所長・京都研究室ディレクター。2007年より現職。スマートフォン画面をマルチタッチで操作する「スマートスキン」を発明。
野村 触覚以外にも嗅覚、「匂い」を追体験しようと思ったら、様々な物質が関係しているから再現が難しいですよね。「匂い」自体を伝えるのではなく、同じ匂いを「感じる」ようにする方が早いのではないでしょうか。

米カリフォルニア大学 バークレー校物理学科 教授 バークレー理論物理学センター長。
ローレンス・バークレー国立研究所上席研究員、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構連携研究員、理化学研究所客員研究員を併任。研究領域は素粒子物理学、量子重力理論、宇宙論。2000年に東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。米国フェルミ国立加速器研究所研究員、カリフォルニア大学バークレー校助教授、同准教授などを経て現職。