2023年1月30日(月)

天才たちの雑談

2022年12月18日

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壁に付箋を貼って「ブレスト」をしたところで、目新しい「アイデア」は出ない。肩の力を抜いた「雑談」から、イノベーションの種は生まれ出る。日本の科学や技術を牽引する「天才」たちが、今回は「脳と腸」について、縦横無尽に語り尽くす。
聞き手/構成・編集部(大城慶吾、木寅雄斗) 
撮影・さとうわたる

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瀧口 最初のテーマは「脳にたまった『ゴミ』が認知症を起こす」です。人間の脳にゴミがたまるとは、初めて聞きました。

瀧口友里奈 Yurina Takiguchi
経済キャスター、
東京大学工学部 アドバイザリーボード・メンバー
東京大学文学部卒業。現在、東京大学公共政策大学院に在学中。2022年より新生銀行社外取締役に就任。これまでに『日経CNBC』キャスターなどを務める。

富田 脳の中では常に、タンパク質がつくられては壊されてと、代謝が行われています。年を取ってくると、掃除をサボったような状態になってきて、「アミロイドβ」や「タウ」というタンパク質がゴミとなってしまい、脳にたまっていきます。どうもそれが神経細胞を殺してしまい、認知症になってしまうのではないか、ということが分かってきています。

富田泰輔 Taisuke Tomita
東京大学大学院薬学系研究科 教授
東京大学薬学部卒業、同大学院薬学系研究科博士課程中退。博士(薬学)。同研究科講師、准教授を経て、2014年から現職。専門はアルツハイマー病・認知症の研究。

瀧口 若いときは排出する機能が健全に働いているということですか。

富田 老化は恐らく関係していると考えられています。ゴミ掃除に関して注目が集まったのはこの10~20年ぐらいのことで、まだ分かっていないことが多いですが、他には睡眠や運動などが関わっているのではないかとされています。

アルツハイマー病患者の脳にたまった「ゴミ」の画像。①はアミロイドβで構成される「老人斑」、②はタウから作られる「神経原線維変化」(富田泰輔教授提供)

瀧口 運動・睡眠以外で「脳内環境」を整える方法はないのでしょうか。

富田 今注目されているのはやはり免疫ですね。脳内の免疫システムというのは、実はずっとあまり分かっていませんでしたが、特に認知症の研究から脳内の免疫が重要だということが判明してきました。現在、脳内の免疫の研究、またそれに関連する新しい薬の開発などが進められています。

加藤 ゴミがたまっているというのをどのように発見するのでしょうか。

加藤真平 Shinpei Kato
東京大学大学院情報理工学系研究科 准教授
慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程修了。博士(工学)。米カーネギーメロン大学などで研究員を務め、2016年より現職。ティアフォー創業者兼最高技術責任者(CTO)。

富田 今、最も確実に診断できるのは陽電子放射断層撮影法(PET)などによる脳画像の視覚化です。ただまだ研究目的のみで、かつ大きい病院でしかできないので、血液検査による診断の研究が非常に盛んに進められています。ここ5年ぐらいの間に実現するかもしれません。多くの研究者が、認知症になる前にそのリスクを診断できるようになることを目指しています。

瀧口 誰もが認知症になることを防げるような世の中が本当に実現する可能性があるということですか。

富田 今はリスクを見積もれるところまで来たので、次はそれを予防・治療できる薬を作る、または予防法を普及させる、という段階です。

新藏 脳では、「これは悪いやつだから排除しよう」という細胞がゴミ掃除をしているわけですよね。これは全身で起きていて、たとえば動脈硬化の場合は余分なものが動脈壁に付いて脳卒中になったりする。これもゴミを処理し切れなくなったからです。脳でも血管系でも全てにおいて、広い意味の免疫が体の健康、つまり「恒常性」を守るのにすごく大事なのだということが最近分かってきています。「ゴミ掃除」の研究はこれから非常に重要になると思っています。

新藏礼子 Reiko Shinkura
東京大学定量生命科学研究所 教授
京都大学大学院医学研究科博士課程修了。博士(医学)。麻酔科臨床医として病院勤務、奈良先端科学技術大学院大学教授などを経て、2018年より現職。

加藤 免疫を高めるというと、「よく寝てよく食べて」ですよね。免疫が大事だというのは社会でも共有されていると思いますが、免疫の研究は今どこまで進んでいるのでしょうか。


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