2025年3月30日(日)

天才たちの雑談

2025年2月20日

合田 「コンピューティング」と「ストレージ」で区別すると分かりやすくて、指示を出したり、処理をするコンピューティングの部分は、脳の電気信号的な部分に依存が強いことが分かっています。ただ、記憶というのは長期的なもので、ストレージの〝どこか〟に溜めている。それらは電気的なものではなくて、RNAのような物質に保管するほうが効率的なので、そうなっているのではないかと言われています。

加藤 なるほど。そうやって言われると分かりやすいですね。人間をコンピューターに例えるとすると、何か処理的なものは脳がつかさどっていて、記憶みたいなものは、もしかしたらRNAとか遺伝子の分野なのではないかということですね。

合田 オカルト的ではありますが、臓器移植でレシーバーにドナーの記憶が移ったり、性格が変わったという話もありますよね。臓器もRNAを含む細胞で構成されているので、単なる迷信ではないかもしれません。

タイムマシンは
実現する?

瀧口 SFでは作中に今はまだ実在していない様々な装置や道具も出てきます。その代表格が「タイムマシン」ですが、これは実現できるのでしょうか?

野村 これは相対性理論によって結論づけられていて、未来に行くことは可能です。時間の流れ方は、皆同じように思えるかもしれませんが、簡単に言えば、速く動けば時の流れは遅くなります。つまり、自分が非常に高速で動いていて、周りが100年経過している間に自分が1年しか経過していなければ、99年先の未来に行けるということです。

瀧口 人間はどのくらい速く動けば時間をずらして未来に行くことができるのでしょうか。

野村 自然界の最高速度である「光速」に近づけば近づくほど、大きく時間をずらすことができます。ただ、現実的には素粒子などの極微のもの以外は、光速まで加速させることは困難です。

 物理学的に言うと、光速に近い速さで動けるマシンを作ることができれば、それがタイムマシンとなります。しかし、単に未来に行くだけであれば「冷凍技術」と「解凍技術」が発達し、眠っている間に未来になるのを待つ方がはるかに安く簡単な方法だと言えるので、タイムマシンをどう捉えるのかにもよりますね。

合田 ドラマ『スター・トレック』シリーズでは「タキオン」という光の速度を超える超高速粒子を用いたビームなども出てきますが、あれは可能なのでしょうか。

野村 もし原理的に光速を超えたとすると、相対性理論の数式上は過去に行くことになるんですが、今の物理理論が正しければ、過去に行くことは不可能でしょうね。

瀧口 なぜ過去に行くことはできないのでしょうか。

野村 そもそも「過去」とは何かを定義しなければいけません。例えば、少し昔に行って起こった出来事を変えると、そこから新しい世界が生まれます。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のような設定ですよね。ただ、これは本当に自分の経験を書き換えたわけではなくて、書き換えた世界を新たにパラレルで作っているという方が正しい。そうなると、枝分かれしてできた、もう一つの世界は「過去」ではなく「未来」ということになります。

パラレルワールドは
存在する?

瀧口 「パラレルワールド」はアカデミー賞を受賞した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』─『エブエブ』や『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』をはじめ多くのSFで描かれてきましたが、これは存在するのでしょうか。

野村 そうですね、ある物理実験では、我々の通常の感覚では共存しえないはずの現象が同時に起こっていることが確認されていますので、ある意味ではパラレルワールドが存在すると言えます。


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