2023年1月30日(月)

天才たちの雑談

2023年1月25日

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イノベーションの創出には博士人材の活躍が欠かせない。日本社会に横たわる課題とその突破口について、東京大学の「天才」たちが〝雑談〟した。
聞き手/構成・編集部(大城慶吾、木寅雄斗) 
撮影・さとうわたる

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瀧口 今回のテーマは「日本が〝尖った〟人材を活かすには」です。その筆頭が博士人材であり、現在、日本では博士を増やすことが喫緊の課題ともいわれていますが、その背景や理由について、まずは伺っていきたいと思います。

瀧口友里奈 Yurina Takiguchi
経済キャスター、
東京大学工学部 アドバイザリーボード・メンバー
1987年神奈川県生まれ。東京大学文学部卒業。現在、東京大学公共政策大学院に在学中。2022年より新生銀行社外取締役に就任。これまでに『日経CNBC』キャスターなどを務める。

合田 米国が基礎研究を行い、それを基に日本が大量生産をする、というのが昭和日本の産業構造でした。その中で求められていたのは、博士人材というよりも、「ミスをしない均一な人材」でした。大学の役割も、海外の学問を日本の社会や産業に合わせて翻訳することでした。

合田圭介 Keisuke Goda
東京大学大学院理学系研究科 教授
米カリフォルニア大学バークレー校物理学科を首席で卒業。マサチューセッツ工科大学大学院物理学科博士課程修了(理学博士)。カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)工学部などで研究を行う。2012年より現職。UCLA工学部生体工学科非常勤教授、中国・武漢大学工業科学研究院非常勤教授を兼任。

 しかし大量生産の担い手の座は中国や東南アジアなど、新興国に奪われました。日本の産業にはイノベーションと、イノベーションを生み出せる博士人材が必要です。これからの日本はアイデアを翻訳するのではなく、アイデアを生み出す側に回る必要があるのです。昭和モデルからはイノベーションは生まれません。

加藤 僕は博士人材を「課題解決能力に優れている人」と定義しています。課題を解決するにはさまざまな知識が必要になってきます。博士とは、課題の中の問題を発見し、社会のニーズや歴史を理解し、それらを踏まえた提案ができる人。そして、提案したものと過去の前例を比較し、どのくらい優れているのかを定量的に数値などで示し、簡潔に伝えられる人です。その能力は、5年間の博士課程で育まれていくことになります。

加藤真平 Shinpei Kato
東京大学大学院情報理工学系研究科 准教授
1982年神奈川県生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程修了。博士(工学)。カーネギーメロン大学などで研究員を務め、2016年より現職。Tier IV(ティアフォー)創業者兼最高技術責任者(CTO)、「The Autoware Foundation」代表理事。

合田 修士と博士の違いは、「独自に」課題を解決できる能力があるかですね。各大学で違いはあっても、この「自ら」という部分は変わりません。

江﨑 僕が博士に要求しているのは、抽象化とストーリーメイキングができることですね。修士では特定の分野の中だけ見えていても構いませんが、博士になると「隣の庭」である違う分野もしっかり見て、その上で僕の研究はこういう立ち位置ですよ、というストーリーを語れないといけません。

江﨑 浩 Hiroshi Esaki
東京大学大学院情報理工学系研究科 教授
九州大学工学部修士課程修了。東芝、米コロンビア大学客員研究員、東京大学大型計算機センター助教授などを経て現職。デジタル庁Chief Architectなどを兼任。『インターネット・バイ・デザイン』(東京大学出版会)など著書多数。

新藏 医学部の場合、修士にはならず医師免許を取って医者になり、その後に大学に戻って博士号を取るパターンが普通で、私自身もそうでした。博士号を取る前後で何が変わったかといえば、製薬会社の医薬情報担当者(MR)の言うことを鵜呑みにしなくなったことですね。示されたデータに対し、正しいかどうかを自分で柔軟に判断する、この「仮説思考」が重要です。これが固定観念を切り崩し、イノベーション創出につながる鍵だと思います。

新藏礼子 Reiko Shinkura
東京大学定量生命科学研究所 教授
京都大学大学院医学研究科博士課程修了。博士(医学)。麻酔科臨床医として病院勤務、米ハーバード大学研究員、長浜バイオ大学バイオサイエンス学部教授、奈良先端科学技術大学院大学教授などを経て、2018年より現職。専門は免疫学、分子生物学。

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