2024年12月22日(日)

Wedge SPECIAL REPORT

2023年1月22日

C.J>BURTON/GETTYIMAGES

 少子高齢化、脱炭素、デジタルトランスフォーメーション(DX)……。日本企業を取り巻く環境は劇的に変化し続け、解決すべき課題はいっそう多様化・複雑化している。転職や副業に対するハードルが下がり人材の流動性が高まったことや、既存の業界や領域に縛られることなく新たな業界に進出する企業が増加したことは、その裏付けともいえる。

 こうした時代にこそ生かすべきなのが、「出会いのデータ」だ。Sansan(東京都渋谷区)は出会いの証明でもある「名刺」を活用し、従来、可視化が難しかった人に紐付くデータを蓄積させて社内外で役立つサービスを展開する。

 その一つが営業DXサービス「Sansan」だ。同サービスの機能「同僚ナレッジサーチ」(図1)では、キーワードを入力することで特定の業界や分野に詳しい同僚を検索することができる。

図1:同僚ナレッジサーチは、検索ボタン1つで誰がどのようなネットワークを有するかが分かる 写真を拡大

 例えば、「金融」と入力すると、過去に銀行、証券、保険会社など金融業界の人たちと名刺交換した実績がある同僚の名前が出力される。社内のどの部署の、誰が、どのようなネットワークを有しているかが一瞬で分かるのだ。新規事業に挑戦するプロジェクトチームを立ち上げる際など、メンバーの選定には大きく寄与するだろう。

 対象企業との名刺交換の実績を可視化し、部門や役職ごとにどの程度接点を持っているか、一目で確認できる機能が「ABMダッシュボード」(図2)だ。対象企業を複数選択して比較したり、対象企業との接点を時系列で並べ、変遷を追うこともできる。

図2:ABMダッシュボードは企業ごとのつながりの広さや深さが一目で分かる 写真を拡大

 例えば、「A社とは企画セクションとの接点はあるが、金融セクションとは接点がない」「B社のITセクションとは一般社員から課長クラスまで接点があるが、部長以上とは接触できていない」など、企業ごとにつながりの広さや深さを可視化することで、営業活動の戦略が立てやすくなる。

 人と人のつながりの可視化は、導入企業からの評判も上々だ。大手デベロッパーで経営企画を担うある社員は「役員、総務、経理、人事、広報などのコーポレート部門が持っている社外とのリレーションを、いかに前線で働く営業などの社員と共有するかが大きな課題だった。部署や会社内など、組織の内側にだけでなく、外側に向けて有益な情報を共有できるようになったことは大きい」と効果を口にする。

 同社で営業業務に従事する別の社員も期待を込めてこう語る。

 「他部署から『この企業にヒアリングしたいがどのような会社か』『この企業との面談に同席してもらえないか』という依頼が増えた。社内で顧客情報の共有がスムーズになり、なんとなく感じていた部署間の精神的な壁が取り払われ、他部署にも大事な情報を共有しようという意識が高まっている。また、お客さまから『同じグループ傘下の別の会社からも同様の提案を受けている』という声をいただくこともしばしばある。今後、グループ全体でこうした情報を共有できるようになれば、お客さまのストレスや負担も軽減できると思う」


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