2024年12月7日(土)

Wedge SPECIAL REPORT

2022年6月1日

 メタバース、MaaS、地方創生、社名からは想像がつかないほど事業範囲の広い大日本印刷(DNP)。その背景には何があるのか、北島義斉社長に聞いた。
聞き手・編集部(大城慶吾、友森敏雄) 
写真・井上智幸
北島義斉(Yoshinari Kitajima)
大日本印刷代表取締役社長
1987年慶応義塾大学経済学部卒業後、富士銀行に入行。95年に大日本印刷に入社。2018年6月代表取締役社長に就任。

規事業の原点となる
印刷事業

 メタバース空間「バーチャル秋葉原」を今年4月にオープンさせた。ここではVR(仮想現実)グラスや、ウェブブラウザから、買い物をしたりデジタルギャラリーを訪れたりすることができるほか、企業はサイネージ広告を出稿することもできる。

メタバース空間「バーチャル秋葉原」も印刷技術が起点になっている (DNP)

 「雑誌や書籍のデジタル化を進めていく中で、書体や画像の加工で培ってきた技術がメタバースにつながっている。デジタル化自体は以前から取り組んできたテーマだ。例えば、美術作品などをデジタル化して、普段見られない角度から見たり、持ち上げたりできる新しい鑑賞方法を開発している。DNPが運用する東京アニメセンターでもコンテンツの新しい魅力を国内外に発信している。

 そしていま、メタバース空間を使い、リアルとバーチャルの融合によって、現実の地域や施設が持つ価値や機能を拡張させて新しい体験価値を生むといった取り組みを、渋谷区、札幌市、京都市などと一緒に進めている。

 秋葉原は、実際に外国人の方が訪れると少し物足りなさを感じることもあるそうだ。というのも、漫画『AKIRA』(大友克洋、講談社)のような世界を期待しているからだ。メタバース空間であれば、そのような現実を拡張した世界をつくることも可能だ」

 一見、関係ないように見えても全ての原点は印刷技術にある。

 「印刷の技術を基にして事業拡大をしてきたので、全くの『飛び地』のことをやってる感覚はない。ただし、現在重視しているのは、従来のように顧客のニーズを待つだけではなく、何が求められるのか自ら探し出していく、問題設定、課題解決型の取り組みだ。

 世の中が複雑になり、その変化も早い。今までは顧客からのオーダーをもとに製品を開発して提供すれば採用して頂ける時代だったが、どういうものが欲しいのか、顧客自身も分からないという時代になりつつある。

 もっと言えば、直接生活者に向き合って、世の中に求められているものはどのようなものか、われわれ自身で探し、提供するものを作っていくということが大事になる」


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