Wedge SPECIAL REPORT

2022年4月1日

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イラストレーション・相田智之

〝日本型雇用〟は限界を迎えている──。2019年、経団連の中西宏明会長(当時)やトヨタ自動車の豊田章男社長といった財界トップによる、日本の雇用形態を見直す声が相次いだ。「終身雇用」や「年功序列」を前提とした日本型雇用は、少子高齢化で労働生産人口が逆ピラミッドを描くにつれ、〝制度疲労〟が見えてきた。奇しくも、翌20年来のコロナ禍での雇用の喪失やテレワークの浸透は、労働者側の仕事とキャリアに対する考え方にも大きな影響を与えた。

 「社会」と「個人」の変化を起点にしたわが国の雇用の〝転換期〟は、どこに向かうのか。

 経団連などの動きに企業も反応する。従来の日本企業では、「職務遂行能力は勤続年数の経過によって向上する」という「職能給」の考えに基づいて賃金が決められていた。だが近年、欧米企業のように、職務内容や必要なスキルを企業が明確化したうえで、その成果によって賃金を決める「職務給」へと人事制度を転換しようとする動きが増えてきた。20年以降、にわかに注目されている『ジョブ型雇用』の導入もその一環である。

 日本の雇用環境の変化に伴う制度見直しの動きについて、企業の人材・組織開発を専門とする立教大学経営学部の中原淳教授は「人事制度の見直しは企業風土や組織を活性化させる可能性がある一方で、その逆の作用をもたらす恐れもある。流行り廃りに流されず、自社の特徴を把握したうえで、経営判断として実施すべきだ」と指摘する。

 多くの日本企業が共通課題を抱える中、先陣を切って人事制度改革に踏み出した先進企業の〝現在地〟を追った。

「ジョブ型」のトップランナー
日立が抱える今後の課題とは

 日立製作所は、管理職社員に適用している「ジョブ型雇用」を、22年7月より一般従業員にも拡大する。同社は21年度、個々の管理者向けに、職務内容や必要なスキルが明記された約9500枚に上る「職務記述書(ジョブディスクリプション。以下、JD)」の導入を完了しているが、新たに一般従業員向けについても用意する。

 ジョブ型への転換点となったのは08年のリーマンショックだった。同社は将来の経営基盤に対する危機感から、従来の国内製造業から脱却し、グローバルな市場の中で製品・システムを活用したサービスを提供する社会イノベーション事業へと舵を切った。その転換に伴い、国内外の事業所で国籍を問わず協働していくための新たな人事制度を再構築する必要があったという。

 同社人事勤労本部の岩田幸大ジョブ型人財マネジメント推進プロジェクト企画グループ長は、ジョブ型雇用転換の意義について「企業は仕事を『見える化』し、それに応じる形で従業員はスキルを明示することで初めて、グローバルな規模での適所適材を実現することができるようになる」と語る。

 国内16万人、海外19万人の従業員を抱え、間違いなく国内におけるジョブ型雇用導入の先進企業である同社だが、今後に関する課題も残されている。

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