2024年4月27日(土)

Wedge SPECIAL REPORT

2022年4月1日

 「『新卒社員にすぐにジョブ型を適用するか』については現時点では未定だ。また、今回の適用拡大はあくまで『個別JD作成』にとどまり、一般従業員の賃金制度はこれまで通り、『職能給』のままとなる。将来的には、管理職と同様、一般従業員の賃金制度もジョブ型に沿って能力基準から職務基準へ移行したいが、彼らは労働組合員なので組合と議論を重ねていく必要がある」

 組織の〝DNA〟を受け継いでいくことに重きを置きながら、変わろうとする企業もある。ブリヂストンは独自の新人事戦略である「B-HRX」を20年より開始した。この取り組みの一つとして、日本型雇用の特徴でもある終身雇用を前提にさまざまな部署を経験させるメンバーシップ型とジョブ型を組み合わせたハイブリッドな人事運用を目指す。入社後ジョブローテーションによって複数の職場を経験したのち、例えば管理職になったタイミングでジョブ型に移行する。

 同社の江上茂樹HRX推進・基盤人事・労務・総務統括部門長は制度設計の狙いを「職務が明確化されるジョブ型雇用は、新たな事業に適した人材を社内外から獲得しやすくなるなど、変化に応じた事業戦略が立てやすい。一方、入社後しばらくは幅広い業務経験を通じて『タイヤを創って売る』というコア事業を中心とした当社独自の技術・ノウハウといった部分について習得していく期間を設けることも人材育成の観点から重要だと考えた」と語る。また、将来のジョブ型への移行を踏まえ、従来制度では自身のキャリアについて受け身だった従業員に対しても「メンバーシップ型の期間内でも、自律的に自らの適性やスキルの獲得に向けて動いてほしい」との期待を述べる。

「個」の成長を促す「仕事」を
三井物産の新たな挑戦

 仕事(ジョブ)に人を充てる「ジョブ型」とは異なる発想で、人事改革に取り組む企業もある。三井物産は、21年度より新たな人事制度の運用を開始した。「人の三井」で知られる同社の制度コンセプトは、「成長し続ける個人」を生かし、その能力に応じた役割を用意することだ。従来制度では新卒社員に対して入社後6年間の初期教育期間を設け、昇給も横並びで、期間中に異なる事業領域を経験させ幅広く能力開発をしていたが、新制度では同期間を3年に短縮し、早い段階から自律的なキャリア形成を可能とした。

 また、これまでは仮に若手従業員本人が立ち上げた事業であっても、本人の等級が管理職クラスに達していなければ、事業マネージャーなどの役職に就けなかった。このような〝役職キャップ〟を外すため、本人の能力とそれを発揮する役割があれば、所属する事業部の推薦に基づき、管理職クラスの権限と待遇が与えられる「キャリアチャレンジ」制度を導入した。初年度である21年度は20代後半~30代前半の4人の若手社員が、所属する事業部や人事部門のサポートを受けながら、管理職としての仕事に挑戦している。


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