「貧しい日本」──。最近、新聞や経済誌で日本の貧しさを特集するものが増えている。所得が増えないことや、それに伴う格差の拡大はこれまでも問題視されてきたが、秋口から一気に進んだ日本売りとも言える円安によって、「貧しい日本」が急速にクローズアップされている。
Wedge誌でも昨年10月号において『人をすり減らす経営はもうやめよう』という特集が組まれた。オンラインメディアでは、寄せられたコメントを読める仕組みがあるが、そこには政治家や日銀、企業経営者たちに対して怨嗟ともいうべき声が多数寄せられている。
バブル崩壊後の経済不振に対して「失われた10年」と表現されたが、銀行の不良債権問題が解決しても、デフレが定着した日本経済は一向に浮揚せず、「失われた30年」を送ってしまった。つまり、平成という元号の間中、われわれ日本人は豊かさの実感を得ることができなかったのである。令和が始まって早々のコロナショックもあり、このままでは「順調に」失われた40年を送ってしまうだろう。
一国の経済問題の改善は、政治や中央銀行のマクロ施策と、企業・消費者によるミクロ戦略の二面が噛み合うことが必要だ。そのミクロ戦略を考えるとき、ポイントとなる問いがある。
「あなたの会社では、35歳の時の給与で、銀行でローンを組んで住宅の購入ができるか?」