米歴代共和党政権の強固な支持基盤とされてきた退役軍人・家族層の間で「トランプ離れ」が広がりつつある。大統領選挙で欠かせないブロック票だけに、今後の流れ次第では11月5日の投票結果を左右することにもなりかねない。
軍規を無視して選挙広告を作成
「トランプは神聖な国立墓地慰霊を政治利用した」
去る8月末、トランプ共和党大統領候補が首都ワシントン近郊の「アーリントン国立墓地」で行われたアフガニスタン従軍戦死者13人の慰霊献花式に参列した際の“小さな事件”めぐり、米主要メディアはこんな見出しで一斉に大きく報じた。
式典にトランプ選対本部広報カメラ・クルーが同行、厳格な陸軍規定に違反しその一部始終を収録しようとした際、墓地管理職員と小競り合いを演じたことがきっかけだった。
カメラ・クルーは制止を聞かず、大統領選挙用のビデオ広告は作成されたが、その中には、トランプ氏が何千柱も整然と並ぶ戦死者の墓碑を背景にVサインのポーズをとるシーンも含まれていた。
過去の大統領選挙においても、候補者が退役軍人票目当てに「アーリントン墓地」詣でで騒ぎの対象となった例がいくつかあった。近年では、2000年大統領選挙に向け共和党指名候補争いをしていたジョン・マケイン上院議員(当時)が同墓地内を厳かに行進する選挙用録画作成が行われたが、メディア報道で明らかになったため、同議員が直ちに陳謝するとともに、フィルムも破棄された。
しかし、今回は公営ラジオ放送「NPR」が第一報を報じたにもかかわらず、トランプ陣営側が「大統領候補者の活動の一環を記録するのは正当行為」として開き直ったことから騒ぎが大きくなった。
米陸軍の軍規によると、同墓地内において政治目的での撮影行為は厳格に禁止されており、国家公務員職の墓地撮影スタッフのみが許されることになっている。このため、陸軍省は今回の騒ぎに関連し、トランプ選対本部に対し、厳重な「特別警告」を発する事態となった。