投資ファンドや商社の場合はM(Money)toBとも言える。いずれの業態もサービスの提供先は法人なので、高額の料金設定をしやすい。工場のような巨大な資産を持つ必要がなく、事業運営上の資金効率もBtoC、BtoBに比べて格段に良い。このように付加価値の価格への反映のしやすさ、アウトプットの効率性、事業運営の資本効率性などから、CtoC、BtoC、BtoB、CtoBの間で給与水準に差ができるのだ。
ビジネスモデルを
学ぶ意義
給与が支払われるためには売上が立つことが大前提で、そこから原価を差し引いた金額がプラスであることも必要だ。ほとんどの業種では、売上が立つ前に原材料の購入や人手の確保が先行するから、その支払いに対して、金融機関などを介して資金調達をしなくてはならない。これがビジネスモデルである──。日本では、文化的な背景もあってこのような初歩的な認識が疎かにされている。
ビジネスモデルを学ぶ意義は、既に仕事をしている人にとっては自分の給与所得の背景が明らかになることである。個人レベルで、このビジネスモデルへのリテラシーを高めなければならない。リテラシーが向上すれば、稼ぐ力が低い業種には当然に人が集まらなくなる。
経営者は、人材確保のため稼ぐ力を増やすための努力を行わなくてはならない。そのことは、経営者がステークホルダーの中でも特に「人材=人財」に対する責任の自覚を高めることにつながる。「35歳の給与で家が買えるか?」の問いに対して、頭を抱える経営者のもとには、職を求めに出向いてはいけないのである。
日本企業の“保守的経営”が際立ち、先進国唯一ともいえる異常事態が続く。人材や設備への投資を怠り、価格転嫁せずに安売りを続け、従業員給与も上昇しない。また、ロスジェネ世代は明るい展望も見出せず、高齢化も進む……。「人をすり減らす」経営はもう限界だ。経営者は自身の決断が国民生活ひいては、日本経済の再生にもつながることを自覚し、一歩前に踏み出すときだ。
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