ステークホルダーの
利益とは何か?
バブル崩壊以降の企業行動を、経営者によるステークホルダーに対する姿勢で考えてみる。企業はさまざまなステークホルダーに相対している。その中でもコアというべきものは、顧客、従業員、株主、取引先、銀行である。それぞれのステークホルダーの利害は、従業員の給与を上げれば株主への配当の原資が減少する、という具合に相反するものもある。
そのような制約はありながらも、企業価値の向上を通じてすべてのステークホルダーの利益を増大させることが経営者の仕事であると筆者は考える。
その概念を表したのが下図である。顧客の満足度を最大化しつつ、従業員が十分な処遇を得られ、株主も満足のいく配当を受け取る構図だ。取引先と銀行は、彼らの利益の最大化がビジネスの目的ではないが、健全な互恵関係があることが理想であろう。企業が成長している限りはこのような形になる。
バブルの時は、過剰なまでの借り入れをして資産を増やし、事業会社でありながら借金をしてそれを原資に金融投資を行うなど、銀行の利益最大化に協力するような姿勢が散見された。
その後の結果はバブルの崩壊であり、国策として行ったことは金融の再生であった。銀行は過剰に膨張させたバランスシートの圧縮に懸命になり、企業に対して猛烈な貸し剥がしを行った。多くの企業は下図にあるように、銀行の利益を最優先せざるを得なくなった。顧客に対する責任は一定程度果たしつつ、返済原資捻出のため取引先、従業員、株主に過度な負担を負わせたのである。