2022年10月7日(金)

Wedge SPECIAL REPORT

2022年8月21日

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行政デジタル化の解は一つではない。暗中模索する自治体が向かうべき方向性とは。研究者、元自治体職員、IT系ライターである有識者3人の知見と経験からその糸口を探ろう。
聞き手/構成・編集部(川崎隆司)
写真・中村 治
 

編集部(以下、──)ICT技術の導入やデジタルトランスフォーメーション(DX)をはじめ、行政がデジタル化を進めることの意義とは。

廣川 2025年には団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となる。医療介護の分野で行政負担が増加する一方、少子化で職員の数は減っていく。行政業務をいかに効率化、省力化できるかは全自治体の共通課題だ。

行政もマーケティング思考を身に付け、
ターゲット像を想定した戦略を

廣川聡美 Satomi Hirokawa
HIRO研究所代表/元横須賀市副市長
1975年より37年間、神奈川県横須賀市役所に勤め、情報政策課長、企画調整部長、副市長などを歴任。地域情報化計画策定や情報基盤構築、災害情報共有システム構築などの事業に携わる。現在は総務省の地域情報化アドバイザーとして、デジタルに関する計画策定や人材育成などについて全国の自治体へ指南。

庄司 その先にさらに「2040年問題」がある。団塊ジュニア世代が65歳の高齢者となり、団塊世代も90代。総務省が18年に公表した報告では「40年には従来の半分の自治体職員数で、本来担うべき行政機能を発揮できるような仕組みの構築を」と記載された。

 そのような状況で行政の非効率さやアナログな部分が改善されないまま、職員が大量の業務に追われ疲弊しているようでは、若者にとって「未来のある魅力的な職場」に映らない。

職員は「住民全員に等しく手厚いサービスを」
といった発想を転換する必要がある

庄司昌彦 Masahiko Shoji
武蔵大学社会学部メディア社会学科 教授
専門は情報社会学、地域情報化、電子行政など。中央大学大学院総合政策研究科博士前期課程修了、修士(総合政策)。19年より現職。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)主幹研究員などを兼務。総務省「地方自治体のデジタルトランスフォーメーション推進に係る検討会」座長、デジタル庁「データ戦略推進WG」構成員などを務める。

酒井 私たちよりも下の世代はデジタルネイティブ。クラウドやチャットなど、学生まで当たり前のように使えていたITツールが、社会人になって仕事で「使えない」となれば、息ができなくなってしまう。

 民間企業のIT投資額は年々増加し、コロナ禍でリモートワークが進む中、行政と民間とで〝働き方ギャップ〟が広がっていることも背景として認識しなければいけない。

IT企業や市民開発者の参画を受け入れ、地域課題
に取り組む「シビックテック」という概念がある

酒井真弓 Mayumi Sakai
ノンフィクションライター
慶應義塾大学文学部卒業。IT系ニュースサイトを運営するアイティメディアを経て、2018年にフリーへ転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆や企画運営に携わる。著書に『ルポ 日本のDX最前線』(集英社インターナショナル)など。

廣川 自治体が日々追われる業務には定例作業や単純作業も多い。それらをデジタルに任せ、地域計画づくりや住民との話し合いといった職員自らが考える仕事にシフトしていけば、行政業務は自ずと面白くなるはずだ。

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