聞き手/構成・編集部(川崎隆司)
写真・中村 治
編集部(以下、──)ICT技術の導入やデジタルトランスフォーメーション(DX)をはじめ、行政がデジタル化を進めることの意義とは。
廣川 2025年には団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となる。医療介護の分野で行政負担が増加する一方、少子化で職員の数は減っていく。行政業務をいかに効率化、省力化できるかは全自治体の共通課題だ。
行政もマーケティング思考を身に付け、
ターゲット像を想定した戦略を
庄司 その先にさらに「2040年問題」がある。団塊ジュニア世代が65歳の高齢者となり、団塊世代も90代。総務省が18年に公表した報告では「40年には従来の半分の自治体職員数で、本来担うべき行政機能を発揮できるような仕組みの構築を」と記載された。
そのような状況で行政の非効率さやアナログな部分が改善されないまま、職員が大量の業務に追われ疲弊しているようでは、若者にとって「未来のある魅力的な職場」に映らない。
職員は「住民全員に等しく手厚いサービスを」
といった発想を転換する必要がある
酒井 私たちよりも下の世代はデジタルネイティブ。クラウドやチャットなど、学生まで当たり前のように使えていたITツールが、社会人になって仕事で「使えない」となれば、息ができなくなってしまう。
民間企業のIT投資額は年々増加し、コロナ禍でリモートワークが進む中、行政と民間とで〝働き方ギャップ〟が広がっていることも背景として認識しなければいけない。
IT企業や市民開発者の参画を受け入れ、地域課題
に取り組む「シビックテック」という概念がある
廣川 自治体が日々追われる業務には定例作業や単純作業も多い。それらをデジタルに任せ、地域計画づくりや住民との話し合いといった職員自らが考える仕事にシフトしていけば、行政業務は自ずと面白くなるはずだ。