2024年4月27日(土)

Wedge SPECIAL REPORT

2022年8月21日

──まず、何から着手すべきか。

庄司 自治体職員は窓口でのやりとりを前提とした「住民全員に等しく手厚いサービスを」といった発想を転換する必要がある。

 銀行の例になるが、昔はみんながハンコと通帳を持って営業時間に合わせて窓口に並んでいた。その後、ATMが窓口業務を代替し、さらにいつでもどこでも振り込みなどのやりとりができるネットバンキングやスマートフォンアプリが導入された。結果、多くの利用者にとってより便利になり、窓口混雑は解消され、銀行は顔を見て直接応対すべき顧客に注力できるようになった。

 たしかに行政の仕事の中には直接窓口に来てもらい、顔を見ながらの状況把握が必要な場合もあるかもしれないが、全ての手続きや、全ての住民に対して足を運んでもらう必要はない。アナログとデジタルを戦略的に使い分けるべきだ。

廣川 ひと昔前の役場の窓口や地域には〝生き字引〟みたいな人がいて、その人に相談すれば、どの課でどういう手続きをすればいいか、何が必要か、間違えやすいポイントは何か、などと親切丁寧に教えてくれる場面もよく見られた。

 ベテラン職員の存在やご近所付き合いが減って、地域独自のアナログなネットワークが薄れつつあるからこそ、デジタルで補っていかないと住民一人ひとりが時間的なコストを負担することになる。

酒井 苗字変更や死亡に伴う各種手続きなど、同様の変更が複数箇所にまたがって発生し、なおかつ多くの人が経験するような分野では、システム上で一括修正できるような仕組みを取り入れるべきだ。

 デジタル庁も、社会基盤となる行政データについて標準化することで利用促進を目指す「ベース・レジストリ」の政策を掲げるが、国と自治体で連携しながら進めてほしい。

庄司 各自治体が所管する業務システムの標準化は行政デジタル化における「土台」の部分にあたる。それができたならば、整理された状態のデータを取り出して多目的に利用したり、全国の自治体に向けた追加的なサービスをシステムへ同時に取り入れたりといったその先の活用も広がるはずだ。

廣川 住民目線を意識した自治体視点で見れば、人が見やすく、かつロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)などの機械で処理しやすくするために、どのように帳票まで落とし込むのか、画面設計はどうするのかといった業務システムのインプット、アウトプットまで考えてようやく完結する。その検討に際しては、国やベンダーに任せ切ることなく、自治体職員が住民サービスを細部までイメージして進める必要がある。


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