
農林水産省「農林業センサス」によると、稲作の「法人経営体」は2005年の3443から、20年には約1.2万まで3.5倍に増えた。一方「個人経営体」でみると、約140万から約70万と、半減。コメ農家の減少が、コメ不足に拍車をかけるとの指摘もあるが、同じ期間の作付面積は約165万ヘクタールから約137万ヘクタールと2割しか減っていない。生産量も約906万トンから約776万トンと同じく2割弱の減。コメ農家は半減しているが、生産量は2割程度しか減っていない──。
「あくまで思考実験ですが」と前置きしたうえで、茨城県龍ケ崎市で800年以上続くコメ農家を営む横田農場代表取締役の横田修一さん(48歳)はこう話す。
「以前、私も所属する全国稲作経営者会議の若手メンバーで雑談しながら試算してみたんです。日本のコメの作付面積はだいたい150万ヘクタール。そうすると、1人(経営体)1500ヘクタールを担うことができれば、1000人(社)でコメ農家は足りる。これは、あながち〝無理な数字〟ではないね、という話になりました」
農業全般を見たとき、高齢化や農業従事者の減少が喫緊の課題として語られるが、稲作の現場からは異なる様子が見えてくる。プレーヤー(コメ農家)が減って、農地の集約化が進めば、生産性の高い大規模稲作農家が増えるのだ。
ところが、農政は逆行している。「減反」政策は、廃止されたという報道もあるが、飼料用米に転換すれば、10アール当たり最大で10.5万円の交付金を得ることができる。結果として、〝補助金目当て〟で飼料用米を生産する農家も出てくる。
「農政を〝遵守〟すれば補助を受けられるという『クロスコンプライアンス』が現状ですが、農家はもっと自分の頭で考える必要があります。今後、地球温暖化や病害虫被害など生産環境の悪化は避けられません。また、人件費と資材費は固定費なので、生産性を上げていくには、収量と品質を上げるしかないのです」