「Wedge」2021年9月号に掲載され、好評を博した特集記事の内容を一部、限定公開いたします。全文は、末尾のリンク先(
Wedge Online Premium)にてご購入ください。
猛烈なスピードで発達し、世界中の人々にとって欠かせない存在となったソーシャルネットワーキングサービス(SNS)。利用者の誰もが多種多様かつ膨大な「情報」にタイムリーにアクセスできるだけでなく、望みさえすれば不特定多数の相手に自らの主張や思いを発信できる。一国を率いる指導者までもがSNSを駆使して大衆に訴える。そんな光景も珍しくない時代になった。
受信や発信が容易になった分、多くの人にとって身近になったこの「情報」が、日本が欧米諸国と共有する普遍的価値の一つである「民主主義」に牙をむく事態も発生している。
宣伝戦も活発だ。特に中国は自国の宣伝を世界各地で展開し、世論への浸透を目論む。孔子学院やメディアを通して仕掛けるその戦法は巧妙さを極めるが、日本の備えは十分とは言い難い。
これからも日本が世界に対して存在感や影響力を発揮し、価値観を共有する国々にとって信頼に足る〝アジアの砦〟であり続けるためには、国民一人一人の危機意識の醸成と自国を守る体制の構築が急務だ。
「新型コロナウイルスのワクチンは不妊症を引き起こす恐れがある」
最近ソーシャルメディアで拡散した偽情報だ。こうした情報が、コロナパンデミックを機に世界中に広がり、各国による感染症拡大阻止の努力を妨害し、結果として各国国民の生命や生活を脅かしており、バイデン大統領が「フェイスブックなどの対応は人々の命を奪っている」とまで発言したほどである。
ディスインフォメーションとは、政治的・経済的利益を得ること、または意図的に大衆を欺くことを目的として作成された虚偽または誤解を招く情報を指す。また、国内外のさまざまなアクターが世論を歪曲し、政府の政策決定過程に影響を与える活動をディスインフォメーションキャンペーンという。これは、相手国社会の混乱を企図した戦略の一部であり、武力行使の前段階などにハイブリッド戦の一部としても用いられる。
この関係では、ロシアの工作はよく知られるところだ。2014年のクリミアなどに対する介入戦略をはじめ、16年の米大統領選挙では、米有権者向けにディスインフォメーションを拡散したほか、クリントン候補を不利にするため民主党のアカウントへ不正侵入し、電子メールをリークするなどして選挙介入した疑惑がもたれた。
17年の仏大統領選挙では、マクロン大統領が租税回避地に隠し口座を持っているなどといった噂がインターネットで広まったが、こうしたディスインフォメーションの多くがロシアとの関係を疑われた。この7月、プーチン大統領がロシアとウクライナの歴史的一体性について論文を用いて強調したこともそうした戦略の一環として注目されている。
ディスインフォメーションが問題になるのは、それが民主主義の根幹を揺るがし、国家の安全を脅かすからだ。
◇◆◇ この続きを読む(有料) ◇◆◇
◇◆◇ マガジンの購入はこちら(有料) ◇◆◇