2024年4月26日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2022年5月30日

 この強制収容や処罰の規模に関し、共産主義犠牲者記念財団の研究は、新疆秘密文書とRFAの報道を総合的に勘案した結果、180万人のイスラム教徒が、1300〜1400の強制収容所に収容されたとしている(同日付RFA、19年11月24日)。また筆者は、『中国統計年鑑』における新疆の少数民族人口が、17年から19年の間に164万人減少したことを見出し、当サイト「これぞ動かぬ証拠 ‶新疆ジェノサイド〟示した中国統計年鑑」で発表した。今回の「新疆公安ファイル」における趙克志発言が示した「過激分子200万人」という数字は、これらの数字と近似している。

西側からの批判も独自主張で反論

 このような「新疆公安ファイル」流出の結果、中国と西側諸国との軋轢が再燃している。

 英国のトラス外相は、「中国が新疆で人権を侵犯した詳細はショッキングなものであり、驚くべき迫害である」とし、「バチェレ国連人権高等弁務官の新疆訪問が何らの制限も受けないものではないとすれば、中国による真相隠しを意味する」と批判した。またドイツのベアボック外相も、中国の王毅外相に対し、新疆をめぐる驚くべき報告と新たな証拠に基づき、中国が透明な調査をするよう呼びかけた(RFA、5月24日)。

 しかし中国外交部は、こうした批判を「反中勢力が新疆を貶めようとする最新の事例である」と一蹴した。何故なら中共は、バチェレ国連人権高等弁務官の訪中を通じて、グローバルな人権概念そのものを多極化しようと試みているからである。

 5月25日、オンラインで北京の習氏と広州滞在中のバチェレ氏を結ぶ会談が開催されたが、その際に習氏は以下の通り主張した。(要旨は筆者による。中国外交部公式HPに全文あり)

一、 中共は約100年前の誕生の瞬間から、中国人民の幸福と中華民族の復興のために奮闘しており、中国の国情に適合した人権の発展を進めている。

二、 人権に完全な状態はなく、さらに良い状態のみがある。各国それぞれの人権の発展がある。多様な人権概念のあいだの平等と、相互尊重の精神による対話が必要だ。

三、 発展途上国にとって、生存権と発展権こそが第一の人権である。さらに質が高く効率的・公平で、持続性のある、安全な発展を実現させなければならない。

四、 一国の人権状況を判断する基準は、自国の人民の利益がどう擁護されているかである。他国の制度やモデルを持ち込むのは災難であり、最終的に人民大衆が被害を受ける。

五、 人権を口実として他国の内政に干渉する教師ぶった存在は要らない。そのような国は、自国の状況を脇に置くダブル・スタンダードを犯している。


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