「中国のゼロコロナ政策は持続可能とは思わない」
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長がこう発言したのは5月10日のこと。習近平国家主席との「蜜月」がささやかれるテドロス事務局長が、なぜ今になって習主席肝いりの政策に苦言を呈したのか? はたまた国際経済都市・上海のロックダウンが長期化する中、事前に示し合わせてメンツを保った上で習主席に「引き際サイン」を出したのではないか。さまざまな観測気球が飛び交う中、翌日の中国・外務省の記者会見が注目された。
結果は「無責任な発言を控えるよう望む」「新型コロナとの闘いに勝利する自信がある」とテドロス発言を一蹴。事務局長の苦言はいわば〝ガチンコ〟だったことが露呈し、ロックダウンに苦しむ市民にとって一縷の望みになりかけた好機は消え去った。
回復をアピールするも、街は閑散
こうして市民の不満が限界に達する中、上海市政府は「ガス抜き」にご執心だ。
現在、上海の街は、直近7日以内に陽性者が出た居住区を「封鎖区」、それ以降10日以内に陽性者が出た居住区を「管理区」、10日以上出ていない居住区を「防範区」と3つに分類している。封鎖区の住民は家の外にでることが原則禁止、管理区ではマンションなど居住区敷地内の出歩きは可、防範区は近場限定だが街への外出可、とそれぞれ外出規制が異なる。
市民に希望を持たせる狙いからか、市政府は連日の会見でこの3区の人口数を発表。5月16日までに「防範区人口」が上海市民の4分の3以上にあたる約1944万人に達したと「回復ぶり」をアピール。この日からはスーパーやコンビニなどの店頭営業も随時開始するとした。
しかし実像はほど遠い。防範区の住民に話を聞くと、街に出たところで店などはほぼ閉まっていて閑散。さらに実際は居住区の門の外に出ることはできず、事実上の管理区扱いを受けているところが多い他、防範区になってもしばらくは原則外出禁止のままというケースさえあった。