2022年8月10日(水)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2022年4月7日

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樋泉克夫 (ひずみ・かつお)

愛知県立大学名誉教授

中央大学法学部、香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士後期課程を経て外務省専門調査員として在タイ日本国大使館勤務。著書に『華僑コネクション』『京劇と中国人』『華僑烈々―大中華圏を動かす覇者たち―』(以上、新潮社刊)など。

[著書]

 北京での冬季五輪とパラリンピック、次いで全国人民代表大会と全国人民政治協商会議を大過なく終わらせ、今秋に迎える第20回共産党全国大会での政権3期目続投を確実にするための省政府クラスの人事構想を含め政権基盤強化に手をつけ始めた矢先、習近平政権は思いがけずに新型コロナウイルス感染再拡大の波に直撃されている。

ゼロ・コロナ政策が進められていた中国で、再び新型コロナウイルスの感染拡大が起きている(AP/アフロ)

 はたして、習政権が成果を誇ってきた厳格な行動制限を伴う「中国式ゼロ・コロナ政策」に綻びが生じたのか。2022年の経済は全国人民代表大会で内外に示した通りの成長率を達成できるのか。

 ウクライナ危機を「後門の狼」に喩えるなら、やはり「前門の虎」は一度は封じ込めたはずの新型コロナだろう。目下の情勢では政権3期目続投が水泡に帰すことはないにしても、腹背に迎えた「虎」と「狼」への対応次第では政権基盤の脆弱化は覚悟せざるを得ない。どうやら習政権は、悲願とされる政権長期化を前にして〝胸突き八丁〟に差し掛かったようだ。

感染拡大と相次ぐ操業停止

 3月15日、米国の経済・金融情報通信社Bloombergが「香港人口のほぼ半数に当たる360万人がすでに新型コロナに感染した可能性あり」(香港大学研究者らの推計)と伝えているように、爆発的感染拡大に苦しむ香港は都市封鎖され閉塞状態に置かれてしまった。

 都市封鎖の波は香港に隣接する深圳市と東莞市に及び、さらに上海市、遼寧省大連、吉林省長春市へと北上し、次々に経済成長エンジンを襲う。

 封鎖管理対象地域とされた都市では移動制限、公共交通機関の運休、在宅勤務などを含む中国式ゼロ・コロナ政策が実施され、都市機能は極端に低下するばかり。従業員の出社も難しいことから、鴻海精密工業は3月14日にメインの深圳工場の操業停止を発表し、日本企業でもトヨタやセイコーエプソンなどが操業停止を余儀なくされる事態に陥った。

 程度の差はあれ、このような事態が中国経済の足を引っ張ることは確かだろう。そこで注目したいのが19年12月に武漢市で最初の感染者が公表されて以来、習近平政権が堅持してきた中国式ゼロ・コロナ政策が今後とも有効に機能するか、である。その成否が秋の共産党大会の結果に直結することはほぼ間違いだろう。

初期対応の成功を徹底的にアピール

 ここで、中国で最初に新型コロナ感染拡大が報じられ、国際社会が注視する中で厳しい都市封鎖が敢行された武漢市と湖北省における動きを、改めて振り返っておきたい。それというのも、武漢市が中国式ゼロ・コロナ政策の最初のモデル・ケースであり、同市での成功体験が現在に続く習政権の基本姿勢を規定していると考えるからである。

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