2022年10月2日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2022年2月20日

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高口康太 (たかぐち・こうた)

ジャーナリスト

1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。中国・南開大学に留学後、ジャーナリストとして活躍。著書に『幸福な監視国家・中国』(共著、NHK出版)など多数。千葉大学客員准教授を兼務。

「中国選手にだけ大声援って不公平じゃないですか?」

 ある週刊誌編集者から受けた質問だ。北京冬季五輪ではコロナ対策として一般客は入場禁止となり、選ばれた招待客だけが観戦できるようになったが、テレビ中継でもはっきりと聞こえる大声援に違和感を覚えたという。応援があまりに統率が取れていることから、中国選手を勝たせるための、〝プロの応援団〟なのではないかとまで疑っていた。

コロナ禍の開催ということで、北京五輪は観客の動きにも注目が集まった(ロイター/アフロ)

 開会式では各国選手団に声援が送られる中、米国選手団に対してだけは歓声が消えた。国の外交姿勢を色濃く反映させた〝観戦姿勢〟を見ると、ついつい疑って考えたくなる。

招待されるのもありがた迷惑

 同様の疑問を抱いている人は多いようだが、それも無理からぬところだろう。招待客がどのような人なのかについて、中国当局はほとんどアナウンスしていない。

 北京五輪組織委員会の発表によると、一般市民と学生から選ばれた中国人、それにプラスして外交官、スポンサー関係者、中国長期居住者などの外国人から計15万人が招待されたという情報しか明かされていない。大イベントに参加したのだから、興奮と喜びの声をソーシャルメディアに書き散らかす人がでても良さそうなものだが、そうした招待客の生の声はほとんど伝えられていない。

 米紙ウォールストリートジャーナルの報道によると、招待客には箝口令がしかれており、感想をソーシャルメディアに書き込むことはおろか、許可がなくても観戦した試合について外部で発言することすら許されていないという。

 同紙の取材に応じた王さん(北京市在住)は中国共産主義青年団(共青団)の団員だ。団地ごとに招待客の枠があり、町内会にあたる居民委員会によって選ばれたという。団員が選ばれたのは日頃から共産党を支持していることへのごほうびなのか、はたまた問題を起こさない、中国共産党への忠誠心の厚い人物を選んだということなのだろうか。

 もっとも、選ばれるのもありがた迷惑かもしれない。というのも、観戦前14日間は北京市外に出ることは禁止となる。毎日検温して健康に異常がないかも記録する必要がある。そして、観戦前には2回のPCR検査で陰性を証明するという面倒くさい決まりがある。PCRの検査所は往々にして大行列ができている。「金を支払えば待ち時間ゼロで検査が受けられる、ファストパスを買いませんか?」という詐欺メールが出回るほどに面倒に思っている人も多い。

 ここまでして五輪を観戦してもそれで終わりではない。観戦後には、1週間にわたる健康観察期間がある。隔離されるわけではないが、住宅と職場以外は原則として訪問してはならない決まりだ。観戦者本人だけではなく、同居家族も健康観察の対象になるため、家族から軽く恨まれることは必至だろう。

 これだけの厳格な対策が必要となれば、参加できる人も限られてくる。志操堅固な共産党員や共青団員ならまだしも、一般市民ならばひるむ人も多いだろう。同紙によると、招待客の枠を与えられたスポンサー企業も、観戦希望者を探すのに四苦八苦していたという。

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