2022年10月6日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2021年12月21日

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高口康太 (たかぐち・こうた)

ジャーナリスト

1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。中国・南開大学に留学後、ジャーナリストとして活躍。著書に『幸福な監視国家・中国』(共著、NHK出版)など多数。千葉大学客員准教授を兼務。

 中国一の名門大学・清華大学。

 英教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)が今年9月に発表した世界大学ランキングでは、北京大学と並んでアジアトップの16位にランクインした。日本トップの東京大学が35位にとどまったことを比べると、中国が研究、教育の分野でも飛躍していると如実に示している。

 その清華大学傘下の企業にタス・ホールディングスがある。清華大学の研究者や学生の起業を支援するサイエンスパークの運営に加え、大小あわせて800社以上を擁する巨大企業だ。清華大学のエリート研究者、エリート学生たちが作ったテック企業がずらりと顔をそろえる。

 そのハイテク企業群の中に1社、明らかに不釣り合いな企業が混じっている。タス氷雪文旅集団という、ホテル一体型の室内スキー場の運営やリゾート開発を手がけている会社だ。テックのテの字もないビジネスではないか。

 2018年、私はタス・ホールディングスを訪問し事業の紹介を受けたが、説明を聞きながらも「なぜウインタースポーツ?」と頭の中にはハテナマークが浮かんでいた。その表情を見て、担当者は「北京冬季五輪が決まったじゃないですか。これから伸びるビジネスですよ」と説明してくれたのだった。

ウインタースポーツ振興の大号令

 もともと中国はウインタースポーツがまったくと言っていいほど流行っていない国である。というのも、中国はウインタースポーツを楽しむ気候的条件にも恵まれていない。

(ロイター/アフロ)

 暖かい南部でスキーなどの雪上種目が難しいのは当然にしても、寒い北部でも積雪量が少ないため、天然の雪には恵まれない。北京冬季五輪委員会によると、競技会場の雪はほぼすべて人工雪でまかなわれる予定だという。

 人工雪だからダメという話ではないが、寒い北方に住んでいても設備のあるスキー場に行かなければ雪と出会えないとなれば、自然と競技人口も制限されてしまう。

 もし、この状況が一変して、中国人の多くがウインタースポーツを楽しむようになれば……。そこには莫大なビジネスチャンスが生まれるはずだ。そして今、冬季五輪開催という大義名分を得て、中国政府、スポーツ界、経済界は一丸となってウインタースポーツ産業の拡大に突き進んでいる。

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