チャイナ・ウォッチャーの視点

2021年12月3日

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高口康太 (たかぐち・こうた)

ジャーナリスト

1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。中国・南開大学に留学後、ジャーナリストとして活動。著書に『幸福な監視国家・中国』(共著、NHK出版)等多数。千葉大学客員准教授を兼務

 中国共産党は2021年11月11日、同党史上3回目となる「歴史決議」を採択した。歴史決議を行った指導者は毛沢東、鄧小平に次いで習近平総書記が3人目となる。

 「来年秋には新たな総書記が選出される党大会が開催されるが、その前に習近平総書記は権威を盤石のものとした……」という報道を目にした人は多いのではないか。なにせ中国共産党100年の歴史において、わずかに3回だけ。しかも、過去2回の決議は中国共産党の路線変更を決定づけた重要な転換点である。ゆえにビッグニュースであることに間違いはない。

 しかし、上述のような報道からは、この決議がいったいどういう内容で、どんな意味を持つのかについては腹オチすることは難しい。

(新華社/アフロ)

 

党内に「反対勢力なし」を示す

 そもそも「権威を盤石のものとした」と言われても、「あれ、習近平ってもう圧倒的な権力を握っているのでは? まだ盤石にする必要があるのか? 誰と争っているのか? 」という素朴な疑問が浮かんでくる。実のところ、この問いに明確に答えられる人はいないのではないか。

 現時点で言えるのは、習近平総書記は来年秋の党大会で2期目の任期が終了する。かの鄧小平は権力が特定の個人に過度に集中することを防ぎ、スムーズな世代交代を実現するために、指導者を2期10年で交代するというレールを引いた。習近平はこの原則に反し、3期目に挑戦する可能性が濃厚だ。現時点では習近平を引きずり下ろそうという対抗勢力の姿は見えず障害はないように見えるが、さらなる支持固め、権威強化を狙って史上3回目の歴史決議採択につながったと言える。

 11月16日、中国国営通信社・新華社は歴史決議の全文とともに、起草過程についての説明を発表している。今年3月から取り組みが始まり、中国共産党の各支部各部局、引退幹部へのヒアリングと同意を経て作成されたことが強調されており、決議採択が習近平総書記への全党の支持を示すものであることを説明している。

 こうした状況から見ると、歴史決議の内容そのものよりも、史上3回目の決議を出せたという事実、それこそが中国共産党内部に反対勢力はなく、習近平総書記の権威を示すという評価になるのだろう。

歴史決議と「あやまち」の深い関係

 その意味では歴史決議の内容そのものの重要性は低いが、それでも3万6000字あまりもの長文を読み解いていくと興味深い点が浮かび上がる。

 筆者が注目したキーワードは「錯誤」(中国で「あやまち」の意)だ。

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