習近平は、11月8日に開幕した中国共産党の第19期中央委員会第6回全体会議(6中全会)における「歴史決議」の採択により、自らの権威づけを一段と強めようとしている。これまでに「歴史決議」を採択したのは毛沢東と鄧小平のみであり、習近平は3例目となる。
カナダビクトリア大学教授の呉国光は、Voice of America中国語版へのインタビューにおいて、習近平はこれまでで最も難しい局面に直面しているとして、それを歴史決議によって突破しようとしている、と分析する。呉国光はかつて1980年代に『人民日報』の評論員を務め、趙紫陽のブレーンを務めた人物である。中国の政治改革や共産党大会に関する研究業績がある。
呉国光の分析によれば、この20~30年の中国共産党の権力者たちは、鄧小平の「権力と金銭の取引」という枠組みの下で豊かになった。そして、彼らは習近平が毛沢東を使って鄧小平を否定することを恐れて、みんなで鄧小平が打ち出したものを守ろうとしている。
その上で呉氏は、習近平が「第三の歴史決議によって、毛沢東と鄧小平を同じ箱に入れて自分の枠組を作りだし、その中で中国共産党のトップエリートの思想統一を図ろうとしている」とする。その通りであろう。しかし問題は、どういうものを作れば、それができるか、にある。
多数を納得させようとすれば、妥協の産物となり、多数を引っ張っていく精神的支柱とはならない。イデオロギー色を強めれば強めるほど、ついてくる者は少なくなる。習近平の求心力は、結局は赤裸々な力の世界と戻ってしまう。
呉氏は「習近平は中国共産党の歴史上、政治局委員を最もコントロールできている指導者である」とも指摘するが、これには驚かされる。毛沢東、鄧小平の時代をも含む1973年の第10回党大会以降において、自派の政治局委員の割合が最も多いというのが、その根拠のようだ。共産党の歴史において、習近平はそこまで来たということだろう。
習近平の目標は、第20回党大会において、政治局常務委員会をさらに強く掌握することだが、そこには大きな問題もある。現在の政治局常務委員は、1950年生まれの栗戦書以外は、全員53年生まれの習近平より若い。韓正が54年だが、李克強、汪洋、王滬寧はともに55年生まれだ。趙楽際は57年生まれだ。