世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年10月13日

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 習近平の下、中国の路線は変更されてきている。フィナンシャルタイムズ紙のギデオン・ラックマンは、9月13日付けの同紙論説‘The Xi personality cult is a danger to China’において、習近平への個人崇拝が進められているとの観察を示している(10月8日付け本欄「習近平への『個人崇拝』という統治の危険なレシピ」参照)。

 同様に、ワシントン・ポスト紙のデヴィッド・イグネイシャスも、9月21日付け同紙掲載の論説‘Xi Jinping’s disturbing Maoist turn’で、習近平は毛沢東主義者に転回しているのではないかと指摘をし、中国の今後の方向性に懸念を表明している。ラックマンもイグネイシャスも優れた論者であり、この二人がともに指摘している点には注意すべきであろう。

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 上記イグネイシャスは、次のような諸点を指摘する。

・習は、「共同富裕」と中国の新しい富の公平な分配の理想的な目標を持ち、これに向けた中国の経済運営の変化を権威主義的一党支配の無慈悲な道具を使って推進している

・習は、国営部門がもっと市場の規律に服すように、そして民間部門が党の規律に、より服するように欲しおり、その結果「規律を守っていない」企業家を酷く締め付けることになっている。

・習は、国内革命を進めるため、二つの前衛組織を持っている。一つは党の統一戦線作業局であり、ウイグル、台湾民主派、西側での批判者等に対するキャンペーンを組織化してきた。もう一つは党の規律調査中央委員会であり、王岐山(習の最も重要な副官)の下で過去十年の粛清を組織してきた。

・習は、指導者の任期を2期にする規則と集団指導体制チェック・アンド・バランスをやぶり、3期目を得ようとしている。

・習は「中国の夢」とともに、社会主義の平等の理想で突き動かされており、それは、世界にとり不安定をもたらし、中国にとっても毒となる。

 こうした習近平の路線変更をどう描写すればいいのかは、大変難しい。イグネイシャスは毛沢東主義者への転回と言っているが、鄧小平路線の変更というのが最も適切ではないかと考えられる。

 鄧小平の先富論に対する「共同富裕」、「韜光養晦」に対する「強国路線」、集団指導制と指導者任期の2期制限の廃止などがそれである。毛沢東への回帰を望んでいるわけではないのではないか。

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