世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年10月8日

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 9月1日から始まった中国の新学期では、新たに小学校から大学まで、6歳児以上の生徒、学生に、「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」と題する教科書が配布された。個人名の付いた教育書が何億の民に配布されるのは、毛沢東時代以来だという。また、大人に対するスマホ・アプリによる「習近平思想」教育は、既に始まっている。

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 これについて、9月13日付の英フィナンシャル・タイムズ紙で、同紙首席外交コラムニストのギデオン・ラックマンが、「習の個人崇拝は中国にとり危険である。指導者の儀式的畏敬と組み合わさった一党支配は誤った統治へのレシピである」との論説を書き、中国での習近平への個人崇拝への動きを批判している。ラックマンは、鄧小平の改革・開放の「中国モデル」は、共産党総書記の任期を5年2期に制限し、集団指導体制を基礎にしており、現在の「習モデル」とは異なると言う。

 このラックマンの論説はよく書かれた論説である。今中国では習近平の個人崇拝が強力に進められているが、結局のところ、それは中国に害をもたらすというこの論説の趣旨に賛成である。ラックマンが言うように、集団的指導体制でなく個人指導体制においては、指導者の交代、権力の継承が秩序だって行われないことになる可能性がより高くなる。

 鄧小平が指導者の任期を5年2回に限定し、権力の継承を秩序立てたのは大きな業績であり、鄧小平の深い考えに基づくものであったが、これを習近平は壊してしまった。権力の継承が多くの問題を今後引き起こすことになると思われる。

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