2024年7月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年10月8日

 次に、個人崇拝の対象となる人の政策は無謬であるとみなされる傾向がある。それを変えることはむつかしく、政策的な硬直性が出てくる。スターリンの死後、3年後の20回党大会でフルシチョフはスターリン批判演説をして、スターリン政策からの転換を図ったが、それに至る道筋は簡単ではなかった。外交面でフルシチョフは対西側との平和共存路線を打ち出したが、ベリアの逮捕、モロトフの追放などが必要であった。個人崇拝時代からの転換は容易ではない。

見当たらない習近平思想の本質

 中国が今後今までのように経済が成長し、ますます台頭してくるとは見ていない。人口は高齢化するし、経済政策はテク企業などの成長部門を「共同富裕」政策で押さえつける可能性が高いとみている。いまの勢いで成功されてはかなわないので、習近平がイデオロギー重視に向かうことは別に嫌うべきことでもないと考えている。

 なお、共産党と独裁、個人崇拝は親和性がある。レーニン主義は前衛としての共産党の組織論であるが、トロツキーは人民が中央委員会に、中央委員会は政治局に、政治局は書記局に、そして最後は書記長にとって代わられる、それで独裁になると警告していた。スターリンの権力確立過程はそういうものであった。

 なお、習近平思想というが、習近平は中華民族の復興、強国中国などのスローガンを掲げているが、思想というようなものは見当たらない。

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