2022年12月4日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2022年2月20日

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高口康太 (たかぐち・こうた)

ジャーナリスト

1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。中国・南開大学に留学後、ジャーナリストとして活躍。著書に『幸福な監視国家・中国』(共著、NHK出版)など多数。千葉大学客員准教授を兼務。

開幕後に中国国内の機運は激変

 もっとも招待客の選定が五輪開幕後に行われていたら、状況は違ったかもしれない。

 「開幕目前の北京五輪、しかし中国人は盛り上がっていない」とのニュースを目にした方は多いのではないか。中国ではウインタースポーツはマイナースポーツだ。暖かい南部はもちろんのこと、極寒の北部でも降雪量が少ないため、スキー人口は少ない。観戦を楽しむファンも、夏季とは比べものにならないほど少ない。

 開幕前に話題を集めた五輪ニュースといえば、海外から首脳が開会式に参加するかしないかという外交ボイコットぐらいであった。招待客の選定はこの無関心の時期に行われていたのだから、観戦希望者探しが困難だったとしても不思議ではない。

 しかし、五輪が開幕すると状況は一変した。4年前の平昌冬季五輪では中国のメダル数は9枚(うち金メダルは1枚)だったが、本稿を執筆している2月18日現在で、14枚(うち金8枚)と過去最高の成績をあげている。ウインタースポーツなんて無関心と言っていた人々は豹変して、今やテレビにかじりついているありさまだ。

 五輪を機にスーパースターも生まれている。その代表格が谷愛凌(グー・アイリン)。女子フリースタイルスキーのビッグエアで金メダル、スロープスタイルで銀メダルを獲得した。米中ハーフながら中国代表になるという、中国人の自尊心と愛国心をくすぐる選択をしたこと、名門スタンフォード大学に合格した知性、ファッションモデルとして活躍する美貌に加えての金メダルで、14億人の注目を集める国民的英雄となった。

 中国のニュースサイトを見ると、「谷愛凌、試合後にはいつもニラ団子を食べる」「谷愛凌、子ども時代の練習写真」といった、競技とは無関係のニュースがずらりと並ぶ。まさにフィーバーだ。

 五輪マスコットキャラクターのビンドゥンドゥン(冰墩墩)はデザインが発表された2019年には「醜い」「ダサい」と酷評されていたが、開幕後に人気が急上昇し、公式ショップでは完全に売り切れ。高額転売されるレアグッズとなった。

 日本テレビの辻岡義堂アナウンサーが「ビンドゥンドゥンかわいい」ともだえている姿が報じられたことがきっかけで、バズったのだとか。辻岡アナまで「義ドゥンドゥン」なるあだ名をたまわり、一躍話題の人となった。

夏季五輪時の盛り上がりとは別物

 こうした手のひら返しは何も中国人だけのものではない。流行り物に弱いことでは日本人も負けてはいない。4年に1度だけフィギュアスケートファン、カーリングファンに変身する人々がごまんといるのは、筆者の周りだけではないだろう。

 むしろ、中国の五輪フィーバーに見てとるべきは、中国の世論操作能力の向上だろう。

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