2024年12月7日(土)

世界の記述

2022年2月27日

 中国ラオス鉄道が開通し、2022年1月20日に寧夏回族自治区からビエンチャンまでの貨物列車が運行された。「債務の罠」との批判を受けながらも中国がこれを完成させた背景には、ラオスひいては東アジア諸国連合(ASEAN)との関係を重視する姿勢が示されている。

ラオス・ビエンチャン駅。昨年12月3日中国昆明とビエンチャンを結ぶ鉄道が開業した (REUTERS/AFLO)

 もっとも中国のASEAN政策は柔軟だ。ASEAN全体とASEAN中国自由貿易協定(ACFTA、02年11月調印)を締結しバージョンアップする一方、国別にその特性に配慮した戦略をとっている。ミャンマー、ラオス、カンボジアでは鉄道・道路・港湾建設による物流ルート確保を、ラオス、ミャンマー、インドネシアでは資源・エネルギー確保を重視してきた。

 22年1月に発効した地域的な包括的経済連携協定(RCEP)で東アジアをカバーするFTAが成立したことで、こうした戦略が実を結びつつある。最近では、欧州との直通貨物列車の新ルートとして中国ラオス鉄道経由でタイに至るルートや、鉄道から中国広西省の欽州港で積み替えてASEAN・欧州航路につなぐルート(西部陸海新通道)が注目されている。RCEPの関税削減や原産地証明の緩和で、協定締結15カ国に跨るサプライチェーンの構築が現実味を帯びてきたためだ。

 また、21年11月の中国ASEAN首脳会議では、習国家主席が以下の5項目を提案した。①平和な家の建設(具体的にはASEANが推進する「非核兵器地帯」の支持)、②安全で安心な家の建設(新型コロナウイルスのワクチン供与、南シナ海における平和維持)、③繁栄した家の建設(資金供給などを通じた経済支援)、④美しい家の建設(気候変動に関するASEANとの対話)、⑤仲の良い家の建設(ASEANにおける職業教育の強化)という内容で、両者の関係を「戦略的パートナーシップ」から「包括的戦略パートナーシップ」への格上げで合意している。実利を外交成果につなげる戦略がとられているといえよう。

Wedge3月号では、以下の​特集「魚も漁師も消えゆく日本 復活の方法はこれしかない」を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンでお買い求めいただけます。
■魚も漁師も消えゆく日本 復活の方法はこれしかない
PART1 魚が減った本当の理由 日本の漁業 こうすれば復活できる
片野 歩(水産会社社員)​
 Column 1  その通説は正しいのか? 漁業のギモンにお答えします
PART2 ノルウェーだって苦しかった 資源管理成功で水産大国に
ヨハン・クアルハイム(ノルウェー水産物審議会(NSC) 日本・韓国ディレクター)
 Column 2   原始時代から変わらぬ日本の釣り 科学的なルール作りを 
茂木陽一(プロ釣り師)
PART3 70年ぶりに改正された漁業法 水産改革を骨抜きにするな 編集部
PART4 「海は俺たちのもの」 漁師の本音と資源管理という難題
鈴木智彦(フリーライター)
PART5 行き詰まる魚の多国間管理 日本は襟元正して〝旗振り役〟を
真田康弘(早稲田大学地域・地域間研究機構客員主任研究員・研究院客員准教授)
PART6 「もったいない」を好機に変え、日本の魚食文化を守れ!
島村菜津(ノンフィクション作家)
 Column 3  YouTuber『魚屋の森さん』が挑む水産業のファンづくり 
森 朝奈(寿商店 常務取締役)
 Opinion  この改革、本気でやるしかない  編集部
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Wedge 2022年3月号より
魚も漁師も消えゆく日本
魚も漁師も消えゆく日本

四方を海に囲まれ、好漁場にも恵まれた日本。かつては、世界に冠たる水産大国だった。しかし日本の食卓を彩った魚は不漁が相次いでいる。魚の資源量が減少し続けているからだ。2020年12月、70年ぶりに漁業法が改正され、日本の漁業は「持続可能」を目指すべく舵を切ったかに見える。だが、日本の海が抱える問題は多い。突破口はあるのか


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