世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年2月25日

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 1月28日国際通貨基金(IMF)とアルゼンチンとの間で445億ドルの債務再編の基本合意がなされた。今回の合意におけるコンディショナリティはかなり甘いもので、金融専門家から厳しい批判も出された。

 これに対し、ゲオルギエバIMF専務理事は、インフレ対策が重要であり実行可能なプログラムである必要があるとして、同合意を擁護したが、アルゼンチン財務相は、歳出削減を約束したわけではないとも説明している。いずれにせよ、詳細は今後詰められることになるが、要するにとりあえずのデフォルトを回避することが主眼である様に受け取られる。

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 フェルナンデス現政権は、巨額債務の責任をすべてマクリとIMFに押し付け、特にキルチネル副大統領は、これはIMF規定に反する違法なもので返済の必要なしとの強硬論を主張し、IMFとの交渉を進めようとする穏健派で現実主義者のフェルナンデス大統領と鋭く対立した。昨年の中間選挙で与党連合が敗れた責任を巡っても両者は対立した経緯がある。IMF合意は議会の承認を必要とするので、キルチネルが反対を貫けば、与党連合が分裂し、フェルナンデスは、野党の中道右派の支持を得る必要があり、IMF合意がアルゼンチン内政に大きな影響を与える可能性もある。

 IMF合意は、アルゼンチン外交にも影響を与えるかもしれない。フェルナンデスは、IMF合意の後、2月3日モスクワでプーチンと会談、北京冬季五輪期間に当たる2月6日には、北京を訪問した。アルゼンチンは、人権について敏感な国であるが、経済的利益を優先したようである。

 フェルナンデスは、モスクワで、IMFや米国に過度に依存することを止め、他の国との関係を切り開くべきでありそれがロシアだと述べた。従来の米国との関係から踏み出す発言である。

 中国訪問は、国交樹立50周年を記念するためでもあったが、フェルナンデスは習近平との会談で、南米の経済規模上位4カ国の中で初めて一帯一路構想に正式に参加することを表明した。アルゼンチン側の報道では、これによりインフラ・プロジェクトに対する230億ドル以上の融資が行われる可能性があり、グリーン開発、デジタル、宇宙、原子力など13の政府機関の間の協力文書も署名された。

 また、一帯一路とは別の既存の枠組みで、中国が開発した軽水炉を用いる原子力発電所(約80億ドル相当、全額中国側融資)等を含む鉄道、水力発電、送電線、太陽光発電など、総額140億ドルに上る具体的協力プロジェクトが署名され、また、アルゼンチン側からは、30億ドル相当の外貨準備強化のための通貨スワップ協定や中国への輸出の増加、多様化、円滑化の要請も行われた。

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