雇用の重要性は今も変わってはいない。今年3月、全人代終了後の記者会見で、李克強首相は次のように述べている。
「今年、私たちはマクロ経済政策を強化していきます。財政・金融政策は雇用目標の実現を目指して展開されています(……)新規都市収容者数は毎年1100万人以上、理想的には1300万人以上を確保する必要があります。比較的十分な今日を実現しさえすれば、いわゆる潜在成長率を発揮することができます。実例を挙げましょう。コロナが深刻だった2020年には成長目標は設けませんでしたが、都市新規雇用900万人以上という目標は設定しました。最終的に1100万人以上を実現したところ、国内総生産(GDP)は2.2%成長と主要経済体で唯一のプラスを記録したのです」
若者の雇用は経済トレンドで乱高下
近年の失業率(都市調査失業率)の推移を下図に示した。
新型コロナウイルス流行初期の20年2月の6.2%が最悪だったが、今年4月には6.1%とほぼ同水準に迫っていた。
そして、世代別失業率を見ると、若年層の失業がきわめて深刻であることがわかる。
25~59歳の失業率には大きな変動はないが、16~24歳の失業率は経済トレンドの変化に激しく反応し、乱高下してきた。現在は18.4%と過去最悪の値を示している。
若年層失業率の高さは中国の雇用習慣とも関連している。日本のような新卒一括採用の雇用習慣がないため、卒業時点では職を見つけられず、インターンをしながら仕事を探す人も珍しくない。彼らは景気が悪化すれば速やかに解雇されてしまう、不安定な存在だ。
若年層失業率の調査は20年5月に始まったため、新型コロナウイルスの影響がもっとも深刻だった20年2月のデータはないものの、当時と同等かそれ以上に悪化している可能性が高い。若年層の雇用で見るならば、中国は今、新型コロナウイルス流行後で最悪の時期にあるわけだ。
しかも、5、6月は中国の卒業シーズンであり、卒業生たちが労働市場に参入してくる。今年の高等教育機関(大学、大学院及び高等専門学校)卒業生は1076万人、史上初めて1000万人の大台を突破した。
高卒での就労者なども含めると、約1600万人が新たに労働市場に参入すると想定されている。目標通りの1100万人の雇用創出に成功したとしても、差し引き500万人が職にあぶれる計算だ。もし雇用創出が目標から半減すれば……、1000万人が職を得られない計算となる。
中国国家統計局の付淩暉(フー・リィンフイ)報道官は6月15日の記者会見で、「卒業シーズンの到来とともに1076万人の卒業生が一気に労働市場に参入する。雇用の圧力はさらに高まるだろう」と、難局を迎えていることを認めた。