3月28日、中国最大の経済都市である上海でロックダウン(都市封鎖)が開始された。従来は「ダイナミック・ゼロコロナ」政策と呼ばれる個別施設・地区封鎖で対処してきたが、感染者の急増で緊急措置に追い込まれた。従来型施策は経済の正常運行を可能としてきたが、限界が露呈した格好だ。
上海に先立って長春や深圳といった大都市もロックダウンを実施しており、有力な経済都市の活動停止に伴って負の影響が明らかになりつつある。2022年第1四半期の国内総生産(GDP)成長率は前年同期比4.8%だったが、前年第4四半期比の伸びは1.3%。景気は、全国人民代表大会でも指摘された「3つの下押し要因」を経路として低迷している。
第一の要因「需要収縮」を見ると、3月単月の商品小売総額が前年同月比3.5%減、前月比10.2%減、特に飲食業売り上げは同16.4%減、同25.3%減であった。第二の「供給ショック」は、ロックダウンに伴う物流停止でサプライチェーンが麻痺したことから生産現場が操業停止に追い込まれている。第3の「期待の弱さ」は、ロックダウンの先行きが見えないことに象徴されている。
こうした下押し要因を投資拡大で打ち消そうとしても、経済成長に対する投資の寄与度は20年2.2㌽、21年1.1㌽と落ちてきており、力不足である。唯一、22年第1四半期の輸出が前年同期比15.8%増(㌦ベース)と踏みとどまっているが、成長寄与度は20年0.7㌽、21年1.7㌽と大きくなく、ウクライナ危機の影響が予測し難いこともあって楽観できない。
有力シンクタンクも厳しい見方を示している。たとえば、香港中文大学の研究グループは、「全GDPの20%を生み出す都市群でロックダウン実施」と仮定して、そのコストを1カ月当たり460億㌦(約5兆9800億円)、GDP総量の3.1%相当と推定。上海を含む4大都市がロックダウンすればコストは同12%にも及ぶとしている。野村ホールディングスは4月21日のレポートで、独自のモデルに基づき、ロックダウン前の段階で通年成長率見通しを4.3%としてきたが、上海の事態を受けて3.9%に、第2四半期の見通しを3.4%から1.8%に大幅に下方修正している。
全国人民代表大会(全人代)の示した22年の成長率目標5.5%は、足元の景気、コロナの動向から見て難度が高い。こうした情勢からゼロコロナ政策を転換すべきとの意見も出てきているが、この政策は習近平国家主席が旗印としてきたものであり、今秋に党大会という重大政治イベントを控えたタイミングで政策転換が行われるのか否かが注目される。
日本企業の様子がおかしい。バブル崩壊以降、失敗しないことが〝経営の最優先課題〟になりつつあるかのようだ。しかし、そうこうしているうちに、かつては、追いつけ追い越せまで迫った米国の姿は遠のき、アジアをはじめとした新興国にも追い抜かれようとしている。今こそ、現状維持は最大の経営リスクと肝に銘じてチャレンジし、常識という殻を破る時だ。