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世界の記述

2022年3月19日

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大西康雄 (おおにし・やすお)

科学技術振興機構特任フェロー

早稲田大学政治経済学部卒業。日本貿易振興機構(JETRO)上海センター所長、JETROアジア経済研究所新領域センター長などを経て、2020年より現職。著書に『習近平「新時代」の中国』(アジア経済研究所)ほか。
 

Jane_Kelly / iStock / Getty Images Plus

 中国とロシアは、上海協力機構(SCO)という安全保障枠組みをともにしていることに加え、2021年6月には中露善隣友好協力条約を延長して関係強化を図ってきた。米欧との緊張関係という共通の背景があり、経済関係の発展ぶりも目覚ましい。米欧など各国が対ロシア経済制裁を強化する中、その行方が改めて注目される。

 振り返ると、中国が「一帯一路」戦略で中央アジア諸国との関係を深め始めた13年ごろには、ロシアには一定の警戒感があった。ロシアなど旧ソ連の5カ国が参加するユーラシア経済同盟と「一帯一路」の間には利害が対立する側面もあったからだ。しかし、ロシアのクリミア併合(14年)後に米欧が対露経済制裁を開始したことで局面が変わる。

 実際にロシアの貿易相手国別シェアを見ると、欧州連合(EU)が13年の49.4%から20年は38.4%に落ち込んだのに対して、中国は10.5%から17.8%に高まった。国別で中国は21年に1400億㌦と史上最高を記録し12年連続の第1位であった。中国は自動車、家電、工作機械などを輸出し、ロシアから天然ガスや木材、農産品を輸入する構造となっている。

 天然ガスパイプラインでは、中露間では19年12月に初のパイプライン「シベリアの力」(全長約3000㌔メートル)を開通させており、ロシアにとってドイツに次ぐ第2位の輸出先となる予定だ。価格交渉が未決着だが、今後30年間で4000億㌦の収入をロシアにもたらすことになる。20年には、モンゴル経由の「シベリアの力2」の建設計画も発表されている。

 エネルギー分野以外の経済関係も本格化している。一般的な直接投資とカテゴリーがずれるが「工程請負」(中国の公的資金利用のプロジェクト建設)の対ロシア投資は21年に56億㌦と3年連続で50億㌦を突破し、エネルギー資源開発、農林開発、商業物流などの分野で用いられている。国境河川のアムール川の道路橋や鉄道橋など両国を結ぶ交通インフラ建設も進む。

 また、ロシア側の協力案件として中国国内で2カ所の原子力発電所建設が行われているほか、月研究の協力ステーション、全地球測位システム(GPS)での協力などについて覚書を交わしており、技術協力も進展している。

 米欧の圧力が続く中で、経済協力を全面展開し、「一帯一路」とロシアの「大ユーラシア・パートナーシップ」を協調・発展させるという両国のスタンスは変わらないと予想される。

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Column 1 迫る〝2025年の崖〟 企業は「レガシーシステム」の刷新を
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 Part 6  「米国流」への誤解を直視し日本企業の強み生かす経営を
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