2024年12月22日(日)

世界の記述

2022年2月13日

 昨年12月、京阪バスが中国・比亜迪(BYD)の電気自動車(EV)バスを採用し運行を開始した。同年4月の佐川急便の「中国製EV」採用報道は、正確には日本のEVベンチャー企業が企画・設計し中国メーカーに生産委託したもの(ファブレス生産)だったが、今回は中国製EVであり、BYDジャパンは日本で50台の販売実績を上げている。

 中国では2020年にコロナ禍の中でも136.7万台のEVが生産されたが、21年には300万台を突破したとみられる。また、中国国内での自動車販売台数のうち11.6%がEVであった(21年1~9月)。

 この急成長に政府補助金(1台当たり1.3~1.8万元=23~32万円)が大きな役割を果たしたことは事実で、23年の補助金撤廃後にこの勢いが続くかは断言できないが、EV市場はすでに一定規模に達しており、トップメーカー3社(BYD、上汽通用五菱汽車、テスラ中国)の生産台数(21年1~9月)はそれぞれ28万台、28万台、21万台で、コスト的に一般自動車と競争可能な水準である。

上汽通用五菱汽車製の小型EVは廉価で知られる (VCG/GETTYIMAGES)

 振り返れば、18年にはEVなど「新エネルギー車」の生産への外国企業投資規制の撤廃で外資100%出資が可能となり、19年にはEV用蓄電池に関する規制も撤廃された。中国政府は、EV産業は自立可能になったと判断しているとみられる。加えて、21年上半期のEVの輸出は2万台、タイのEV市場でシェア90%を取るなど国際的競争力も備えつつある。中国のEV産業は地力をつけている。

 中国政府は、25年までに新車販売の20%前後をEVにするとしてきたが、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)でも二酸化炭素(CO2)排出削減目標(60年までに炭素排出量ゼロ)を示しており、追い風となる。同会議に合わせて、BYDは40年までの化石燃料車生産停止を、長城汽車は25年までに年間販売台数の8割、吉利汽車は同3割を新エネ車にする目標を打ち出した。

 日本は中国のEV戦略、EVメーカーにどう対応すべきだろうか。京阪バスの例では国内製1台7000万円に対しBYD製は1950万円と報じられ、価格(生産コスト)では歯が立たない。ドイツのようにEV車購入に補助金を出すとしても限界がある。地道にコスト削減、使い勝手の良さを追求するしかないといえる。トヨタなど巨大メーカーはEV生産台数目標を明示したが、生産目標を達成するだけでCO2排出削減が果たされるものでもないとの見方もある。

 複雑な連立方程式をどう解くのか、世界はまだ正解を見出していない。

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人類×テックの未来  テクノロジーの新潮流 変革のチャンスをつかめ
part1​   未来を拓くテクノロジー  
1-1 メタバースの登場は必然だった
宮田拓弥(Scrum Ventures 創業者兼ジェネラルパートナー)
  column 1   次なる技術を作るのはGAFAではない ケヴィン・ケリー(『WIRED』誌創刊編集長)
1-2 脱・中央制御型 〝群れ〟をつくるロボット 編集部
1-3 「限界」を超えよう IOWNでつくる未来の世界 編集部
  column 2   未来を見定めるための「SFプロトタイピング」  ブライアン・デイビッド・ジョンソン(フューチャリスト) 
part2   キラリと光る日本の技  
2-1 日本の文化を未来につなぐ 人のチカラと技術のチカラ 堀川晃菜(サイエンスライター/科学コミュニケーター)
2-2 日本発の先端技術 バケツ1杯の水から棲む魚が分かる! 詫摩雅子(科学ライター)
2-3 魚の養殖×ゲノム編集の可能性 食料問題解決を目指す 松永和紀(科学ジャーナリスト)
part3   コミュニケーションが生み出す力  
天才たちの雑談
松尾 豊(東京大学大学院工学系研究科 教授)
加藤真平(東京大学大学院情報理工学系研究科 准教授)
瀧口友里奈(経済キャスター/東京大学工学部アドバイザリーボード・メンバー)
合田圭介(東京大学大学院理学系研究科 教授)
暦本純一(東京大学大学院情報学環 教授)
  column 3   新規ビジネスの創出にも直結 SF思考の差が国力の差になる  
宮本道人(科学文化作家/応用文学者)
part4   宇宙からの視座  
毛利衛氏 未来を語る──テクノロジーの活用と人類の繁栄 毛利 衛(宇宙飛行士)

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Wedge 2022年2月号より
テクノロジーの新潮流 変革のチャンスをつかめ
テクノロジーの新潮流 変革のチャンスをつかめ

メタバース、自律型ロボット─。世界では次々と新しいテクノロジーが誕生している。日本でも既存技術を有効活用し、GAFAなどに対抗すべく、世界で主導権を握ろうとする動きもある。意外に思えるかもしれないが、かつて日本で隆盛したSF小説や漫画にヒントが隠れていたりもする。テクノロジーの新潮流が見えてきた中で、人類はこの変革のチャンスをどのように生かしていくべきか考える。


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