2024年12月22日(日)

世界の記述

2022年4月7日

 2022年3月24日、中国の王毅外相がタリバン政権下のアフガニスタンの首都カブールを訪問した。米軍駐留中の21年7月28日に王外相がタリバン指導者と会見して注目されたが、中国の今後の対タリバン政策はどうなるであろうか。

アフガニスタンの首都カブール(Sohrab Omar/gettyimages)

 もともと中国は、米国とともにタリバンと敵対する旧アフガン政権を支持してきた。当時、中国はタリバンをテロ組織と認定し、タリバンによる新疆ウイグル自治区のウィグル族へのテロ支援を危惧していたからだ。タリバン対策において米国が軍事作戦を展開し、中国は側面支援する役回りであったといえる。

 習政権成立前の12年6月にカルザイ大統領が訪中し、戦略協力パートナーシップ関係確立をうたう共同宣言を発表。その後、14年、16年に「一帯一路」関連で経済、通信、貿易などの分野での二国間協定を締結して関係深化を続け、15~19年は後継のガニ大統領が上海協力機構(SCO)サミットで習国家主席と会談している。

 タリバン政権成立後も、中国の新疆問題重視は変わっていない。上述した21年7月の王外相会見でも、まず「東トルキスタン・イスラーム運動などのテロ組織との関係断絶」を求めている。21年9月に習主席がSCO・CSTO(上海協力機構・集団安全保障条約機構)合同サミットで指摘したのは、アフガン情勢の安定化とアフガンを拠点とするテロ勢力の取締り徹底、であり、まだタリバン政権を公式承認していないなど慎重である。

 一方で、最近は経済面での取り込みを強化している。22年1月には、チャーター機でのアフガン特産の松の実輸入を開始、3月の全人代で王外相は、米国などの対アフガン制裁解除を呼びかけた。今回の王外相訪問でも、鉱山部門の労働再開や「一帯一路」でアフガンが果たし得る枠割について協議したと報じられており、アフガン経由=パキスタンへの通路確保も念頭にあるとみられる。

 中国は、3月31日に安徽省の屯渓でアフガンと近隣諸国(イラン、パキスタン、ロシア、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベク)外相会議(第3回)を主催した。その共同声明では、まず、タリバン政権の施政努力、反テロリズム、反麻薬の努力を評価し、「アフガン近隣国のアフガン経済再建と実務協力に関する屯渓イニシアチブ」の実施を謳っている。

 イニシアチブは、経済・貿易、エネルギー、農業などの分野での協力を強化し、地域経済の一体化を通じてアフガンの発展に貢献することが柱となっている模様だ。今後は、同会議をプラットフォームとする域内の交流強化を図る動きが強まり、中国の影響力が拡大すると予想される。

 
 
 
 

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