2022年10月1日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2022年6月28日

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高口康太 (たかぐち・こうた)

ジャーナリスト

1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。中国・南開大学に留学後、ジャーナリストとして活躍。著書に『幸福な監視国家・中国』(共著、NHK出版)など多数。千葉大学客員准教授を兼務。

 中国銀行保険監督管理委員会はリスクに気づき、21年1月に、決済アプリがインターネット預金を提供することを禁止したほか、靠档計息のようなコスト度外視の金融商品の取り締まりを強化したが、時すでに遅し。今年4月の取り付け騒ぎへとつながることになる。被害者の一部はインターネット預金を通じて預け入れた人々だった。

見逃してはいけない「隠れた株主」の存在

 「農村中小銀行の株主は少数株主が多く、一部には内部のガバナンス、外部からの操縦、違法な関連取引の問題もある」「金融当局による銀行株主の監督と処罰には明確な法的権限が不足しており、隠れた株主や株式代理所有を見抜けないという課題もある」

 中国銀行保険監督管理委員会の肖遠企(シャオ・ユエンチー)副主席は5月20日の記者会見で、村鎮銀行の問題について上述のように言及している。前述の取り付け騒ぎを念頭に発言したものだが、まさに言及されているとおり、取り付け騒ぎを起こした村鎮銀行は隠れた株主によって都合のいい貯金箱と化していた。

 その隠れた株主とは、新財富集団という企業グループを率いる呂奕(リュー・イー)という人物だ。鳳凰網の報道によると、本名は呂光儀(リュー・グワンイー)。炭鉱や高速鉄道の運営、不動産開発、家電販売など河南省で多くのビジネスを展開する地方大富豪だという。数多くの村鎮銀行を支配下に収めており、取り付け騒ぎを起こしたもの以外にも26行が傘下にあるという。

 取り付け騒ぎを起こした前述5行だけで預金額は約400億元(約8000億円)ともささやかれているが、その他26行を会わせるとどれだけの資産が危機にさらされていることになるのだろうか。世界でも先端的とたたえられる中国のデジタルサービス、実際生活してみるとその利便性の高さは間違いないが、一方で詐欺師や犯罪者に武器を授けていることも事実。昔ながらの古くさい金融犯罪でもその被害額は一気に増えている。

 世界最先端と讃えられる中国のデジタル化。新たなサービスをいち早く社会実装し、いち早く未来にたどりつく攻めの面では百点満点だが、セキュリティを守り犯罪を抑止するという防御の面ではからっきし。銀行取り付け騒ぎと健康コード濫用はまさにその課題を満天下に示す象徴的な事件となった。

 
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