α(アルファ)、β(ベータ)、δ(デルタ)、そしてο(オミクロン)と変遷した。オミクロンにしてもBA.1からBA.5とあり、日本では、BA.2が、現在はBA.5が猛威を振るっており、さらにBA.2の変異型である、BA.2.75が新たに出現している。
厚労省などのデータによれば、国内で2回のワクチン接種を終えた人は81%(8月17日現在)。3回目を追えたのは約64%に達している。
ワクチンは一度接種すれば、生涯続くものもあるが、新型コロナの場合は、接種から時間が経過すると効果は下がっていく。実際、4回目の接種を終えた、筆者も十分に気をつけていたものの感染してしまった。
今回のBA.5は、3回目のワクチン接種が進んでいなかった30代以下を狙いうちにし、こどもがいる家庭を中心に広がった。つまり、第7波の広がりは、もともと感染者が少なかったこと、3回のワクチン接種をしていない人が若者に多かったということが背景にある。
行動制限を設けないのは、先述した重症化しにくい変異株だからだ。その分、自宅療養者が150万人を超えていると報告されている。
一方、米国、英国など海外では、感染者数のピークを高くし、ワクチン接種と合わせて短期間で、免疫保持者を増やす「高山型」だ。感染者をゼロにする「ゼロコロナ」より、コロナと共に歩む「ウイズ・コロナ」に重きを置いた対応ともいえる。
当初から、感染者の累計が多かったため、第7波になってからの米国、英国の感染者数報告は少ない。そもそも重症化しないため、報告が適切にされていないとの報道もある。米疾病対策センター(CDC)は、これまで濃厚接触者に対し、ワクチン接種状況によって5日間の隔離を求めていたが、8月12日以降、無症状の場合はワクチン接種の有無にかかわらず隔離はしないとの方針に変えている。
専門家の意見を生かせない
経済回復に向けて、大胆な緩和策を実施できないのが、日本政府の外国人観光客の受け入れ策だ。6月から受け入れたものの、7月の訪日外国人客数はわずか14万4500人(政府観光局調べ)。コロナ前の95.2%減で、空前の円安基調にもかかわらず、観光地は賑わっていない。添乗員ツアーに限定されていること、不要だったビザ取得が求められていること、入国72時間以内の陰性証明が課せられているからだ。
一度動き出した政策を変更するのには時間がかかる。2類から5類への変更や、濃厚接触者の扱い方、外国人観光客受け入れ策などなど。政策変更することはそれまでの政策を否定することにつながると、日本人は考えるからだ。
メディアが毎日感染者数を報道しているが、この発表でどれだけ行動変容を迫られるのか疑問で、感染抑制効果は見られない。その意味でメディアも熟考が不可欠だ。
戦後77年の今年、終戦の日に合わせ、NHKが多くの犠牲者を出したインパール作戦を取り上げた番組「ビルマ絶望の戦場」を放映した。その中で、外国人識者が「日本人指導者は道徳的勇気が欠如している。一度決めてしまった方針が間違っていても修正できない」という旨のコメントが心に残った。
結果的に早く撤退できず、空前の犠牲者を出してしまった。変えられない方針は、現在の新型コロナ対策と重なる。政策についてアドバイスしてきた政府の分科会(尾身茂会長)など専門家グループが、22年5月までに、政府に対し66を超える政策提言をしたが、それがうまく採用されないなど、政治家と専門家の関係はギクシャクしていた。
分科会の枠を超えて尾身会長ら有志が8月初旬、「現行法の範囲内で可能な対策」「法改正などが必要な対策」について提言を発表した。本来は、分科会の中でやるべきことを有志の発表という形にしたのは、政府がそれを認めなかったからだという。