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2022年8月24日

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玉村 治 (たまむら・おさむ)

スポーツ科学ジャーナリスト、科学ジャーナリスト

小学校より野球をはじめ、大学では投手として活躍。スポーツを科学的に分析することを得意とし、バンクーバー、ロンドン五輪、ワールドカップサッカーなどで取材。

SARSと新型インフルの教訓生かされず

 そもそも2類相当としたのは、04年のSARSや09年の新型インフルエンザ(亜型H1N1)流行時の封じ込め成功例があるからだ。全数を把握し、しっかり追跡できれば、新興感染症を早期に封じ込められるという考え方だ。

 SARSの感染力は比較的弱く、致死性が高かったため、しっかり感染者を把握し、隔離したことで、わずか半年で終息した。新型インフルも同様だった。しかし、新型コロナは違っていた。

 感染力が強いうえ、感染しても症状が出ない人もいるなど全く異なっていた。変異しやすさも大きな特徴で、ワクチン接種した人や一度感染した人でもかかっている。厚生労働省は、初期、感染者を増やすと、医療機関が無症候の感染者であふれ、他の疾患の医療ができないとしてPCR検査などの件数を抑えていた。37度5分以上の発熱が4日間続くなど、検査のハードルが厳しかった。コロナ専用病床を増やすなどの整備も全くすすめようとしなかった。しかし、これは結果的に間違っていた。SARSなどの成功例に固執してしまった〝失敗〟とも言える。

 福島第一原発事故の検証でも注目された民間シンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアチブ」による政府の初期対応を検証した報告書「新型コロナ対応・民間臨時調査会」によれば、厚労省は、20年5月になっても国会議員に「誰もがPCR検査受けられると問題が起こる」旨の文書を提出。偽陽性によって医療ひっ迫に陥るとした。官邸内部でもPCR検査拡大を積極的に表明できない雰囲気だったという。

 全数把握をするための受け口となった保健所職員は、合理化によって過去30年で20%以上減少している。日本の医療は民間病院が支え、200床以上の病院の4割は民間だ。その多くが、コロナの受け入れを拒むなどの構造的な問題も露呈した。

 要は、SARS、新型インフルのようにほぼ10年おきにパンデミックが日本を襲っているのに、それに対応できる法整備、体制構築ができていなかったと言える。こうした問題は、新型コロナが広がった2年半で解決することは難しく、今後も医療逼迫は、コロナ終息まで続くことは間違いない。感染しないように努力すること、感染しても重症化しないようにワクチンの追加接種などを行うなど個人の自衛策が重要ということになる。

ウイルス変異の速さに対応できず

 経済活動の回復も中途半端だ。今回の第7波になって、マスクさえしない欧米諸国にならい、日本は初めて行動制限を実施しない、流行拡大期となった。必然的に感染者が増えるのはしょうがない。

 というのも、新型コロナが日本に上陸したころの「水際作戦」「クラスター対策」と異なる対応「ウイズ・コロナ」に踏み出したからだ。当初は、感染者数のピークを低く抑え、すそのを長くする「低山型」だった。つまり、手洗い、マスク、行動自粛などによって、1日の感染者数を抑え、医療機関への負担を回避する、その間にワクチン接種を広げ、免疫を持つ人を増やすことで国全体の感染を防ぐ「集団免疫」を獲得するという戦略である。しかし、この手法は、ワクチン接種が広がらず、集団免疫が獲得できなければ、いつまでたっても感染者は出続けるというやり方だ。

 ウイルスの変異の速さも想定以上だった。国民の6割程度が免疫を獲得すれば、感染の広がりは下火になるとの見方もあった。しかし、新型コロナウイルスの変わり身の早さはすごかった。

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