2024年12月22日(日)

医療神話の終焉―メンタルクリニックの現場から

2024年1月16日

 航空管制官については、1月2日に起きた羽田空港の滑走路で日本航空機と海上保安庁機が衝突した事故で注目されることになった。その内実は、2012年にドラマ『TOKYOエアポート〜東京空港管制保安部〜』で紹介されたことがあるが、一般には、知られた仕事とはいえないであろう。

(gorodenkoff/gettyimages)

ヴィジランス作業における緊張

 航空管制官の業務は、「ヴィジランス」(vigilance)と呼ばれる心理学的機能を必要とする。これは、「外部環境においてランダムな時間間隔で生起するある特定の小変化を発見し、いつでもこれに対応しえるような状態」(Mackworth, 1956)と定義される。

 「ヴィジランス作業」の具体例を挙げれば、わかりやすい。すなわち、船舶のレーダー監視作業、工場における計器監視作業等であり、航空管制官の業務もこれに該当する。管制塔にいる場合、飛行場と周辺空域を目視し、複数の航空機の位置と動きを確認する。レーダー管制室では、レーダー画面を見続ける。

 この業務は、平時は淡々としている。しかし、条件がそろったとき反応することが求められ、かつ、その反応には最高度の迅速さが要求される。この弛緩から緊張へのテンポの変化が、この作業の特徴である。

 一般人にとって、自動車の運転が「ヴィジランス作業」に近い。注意のスタミナにも限度があるので、平時は無用な緊張は控え、力を抜いて前を見ていた方がいい。

 初心者マークのドライバーでなければ、運転時間の多くは、リラックスして前方車両との距離に注意している。そんな中でも、数十秒、数分ごとに発生する例外的事態(前方車両の突然のブレーキランプ、黄・赤信号、横断する歩行者、前方自転車のふらつき等)に際して、一瞬、緊張が高まる。しかし、即座に対応した後は、またもとの単調な注視作業にもどる。


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