2024年12月22日(日)

医療神話の終焉―メンタルクリニックの現場から

2023年5月10日

 Wedge読者のような働きすぎのビジネスパーソンにとって、新幹線の車中は貴重な仮眠時間であろう。東京発の「のぞみ」なら小田原を通過したころから眠気が出てきて、富士川を渡る富士山絶景ポイントを過ぎることは、ほぼ爆睡状態である。

 東海道新幹線下り(新大阪、博多方面)は、かならずE席(グリーン車ならD席)から埋まっていくが、その理由は車窓から富士山の雄姿が見えるからである。しかし、この景色を見たくて進行方向右側の窓際席を買ったはずなのに、寝込んでしまっている残念な乗客がいる。

 しかし、眠気に負けて富士山を見られなかった人の事情も理解できる。出張の多いビジネスパーソンにとっては、毎日が疲労との戦い、寝不足との戦いであろう。

(ijeab/gettyimages)

 そんなお疲れの皆さんのために、「では、医師ならどうするか?」についてご紹介したいと思う。お疲れの医師に、他の医師はどうアドバイスするか。医師が同僚の働きすぎに注意を促すとき、どこに着目するのか。そのあたりのポイントについて触れてみたい。

 その場合、注意する側も専門家ならば、注意される側も専門家である。健康の専門家同士が働きすぎにブレーキをかけるとはどういうことか。

医師の働き方改革へ医師限定「面接指導研修」

 筆者は、このたび医師にしか受けられない研修を受講し、このノウハウを習得してきた。内容は、「門外不出の秘伝」というほどのものではなかったが、それでもプロによるプロのためのマニュアルなので、文字通り「玄人受け」する内容も含まれていた。

 この研修は、厚生労働省による「長時間労働医師への面接指導実施に係る研修」(以下「研修」)と呼ばれるものである。医師なら無料でオンライン受講できる。筆者も半日かけて受講し、2023年3月20日付けで修了証書を授与された。

 24年に医師の働き方改革が始まるのに伴い、長時間労働医師に対する医師面接が義務化された。この面接指導は、ひと月の時間外労働が80時間に達した医師を対象とし、100時間には達しないうちに実施することとされる。実施できるのは「研修」修了者だけである。


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