2025年4月11日(金)

キーワードから学ぶアメリカ

2025年2月25日

 また、第二次世界大戦後に米国の対外援助費が国内総生産(GDP)内で示す比率を見ても、マーシャル・プラン期の3%程度が最大値で、冷戦期でも徐々に低下して1980年には0.5%程度となり、現在では0.3%程度である。米国の対外援助額は世界最大ではあるものの、対GDP比でみれば、ノルウェー、ルクセンブルク、スウェーデン、ドイツ、デンマークなどが0.7%を超えていることを考えても、決して多いとは言えないだろう。

 それはさておき、米国の世論が全般的に国際援助に批判的になっていることが、トランプ政権がUSAIDへの批判を強める背景になっているのは間違いないだろう。

ただ乗りする中国と覇権国家米国のいま

 米国民とトランプ政権が対外援助に批判的になっている背景には、国際政治の構造的な変化もある。一般に、国際政治には世界政府に当たるものがなくアナキーだと言われることが多いが、実際の国際政治は無秩序ではない。例えば、貿易を行うためには海賊対策を行う必要があるし、決済で用いる通貨の信頼性を担保する存在が必要である。

 このような、ある種の国際公共財と呼ぶべきものを提供する国家を、国際政治学では覇権国と呼んでおり、米国は唯一の覇権国だと指摘されてきた。米国は、他国よりも多くの負担をすることで、様々な国際機関を作り上げたり、ドルの信用を担保してきたとされるのである。

 米国がこのような負担を行うことができたのは、長らく米国が軍事的にも経済的にも世界で圧倒的な存在感を示してきたからだった。だが、米国経済の成長が鈍化していくと、このような様々なコストが重荷になってくる。

 他方、中国やインドのような新興国は、それにただ乗りして徐々に力をつけていく。中国やインドは米国に成り代わって覇権国として国際公共財を提供する意志を持っているわけではないだろうが、大国に移行しようとしているのは事実なので、米国はそれを脅威に感じて不満を強めていく。少なくとも、覇権国がその覇権を長期化するためにも、自国の負担を低下させて、他への資金分担を求めるようになっていくのは、ある意味当然の流れだと言えるかもしれない。

 このような国際政治の構造変動を踏まえると、米国が対外援助に徐々に消極的になっていき、USAIDの在り方を改変しようと考えるのも不思議ではないと言えるだろう。このように、USAIDの問題には様々な要因が関係しているのである。


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