2023年11月30日(木)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2022年5月29日

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片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社社員

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会) 『日本の漁業が崩壊する本当の理由』『魚はどこに消えた?』(ともにウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著、『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

 2021年の水産物の漁獲量(天然と養殖の合計)が発表されました。417万トンと、比較可能な1956年以降で、過去最低を更新しました。国内での水揚げ量不足を補填してきた輸入水産物の減少は続いていますが、ここにきてさらに円安という新たな問題が発生しています。

甲殻類をはじめ、かつては日本の独壇場だった水産物輸入(筆者撮影)

 22年4月末、20年ぶりに一時1ドル=130円になりました。しかしこれだけにとどまりません。海外との物価上昇率も勘案した円の総合的な価値は、50年前の水準にまで下落しているといわれています。

 円安は、自動車など輸出産業にとっては好業績につながる一方で、国民生活に直結する食品などの輸入品では、コストが増加します。このため、輸入食材を使用している食品企業は、現地相場や物流費などの上昇も加わり、続々と商品値上げを発表しているのです。

 上のグラフは、水産物の輸入数量と金額を表しています。ピンクの折れ線グラフが輸入金額、青の棒グラフは輸入数量です。輸入金額が上昇して、輸入数量が減少しているのは、輸入単価が上昇していることを示しています。

 20年は新型コロナウイルスの影響で一時的に輸入金額・輸入単価も下落しています。しかしながら、21年にはすでに輸入金額・輸入単価ともにコロナ前の19年を上回っています。

 世界的な水産物の需要が高まり、買い付け競争が激しくなっていくので、輸入量が中長期的に回復して行くことは見込めません。また、輸入単価の上昇は続くので、円安はさらに輸入価格を押し上げる要因として重くのしかかります。


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